広尾学園が「生徒を子ども扱いしない」真の理由 進学校化する中で気づいた学校教育の落とし穴
象徴的なのが、中学1年生から全コースの生徒が参加する「スーパーアカデミア」。国内第一線で活躍する研究者、専門家が集まり、大学生や社会人向けの内容とまったく同じ講義を行う。「中1や中2で体験させたい。高2、高3では間に合わない。たとえ中身が理解できていなくても、見たり聞いたりするだけでも違う」と金子氏は話す。そのほかにも、広尾学園は大学や企業など学外に協力を求め、キャリア教育やインターンシップなどにも取り組んでいるという。
広尾学園が目指しているのは、グローバルに評価される中学校、高等学校になることだ。特定の難関大学に合格させた学校が評価されるのは、日本独特の価値観。それだけにとどまらず今後も、独自の活動を進化させていくという。

その1つが15年から導入しているアドバンスト・プレイスメント(AP)だ。APとは高校の通常の時間割内で、北米の大学の教養レベルの授業を高校教員が実施し、全米統一のAP試験で高成績を収めれば大学入学後の単位として認定されるプログラムのこと。米国の非営利団体カレッジボードが主催し、高校におけるAP授業実施の可否を決定している。
「北米では大学入学者選抜の際に、AP試験の成績が重要な参考指標の1つとして用いられます。本校はAP試験の会場校になっているので、海外大学を目指す生徒たちが自分の実力評価に活用できます。生徒たちはAP試験に向けてよく勉強しています。日々の授業レベルの高さと生徒の意欲が相乗効果をもたらして、よい結果が出ています」
今般、学校のICT環境の遅れが取り沙汰されているが、「本当に遅れているのは教育に対する考え方や価値観」だと金子氏は指摘する。社会人が1人1台、デジタルデバイスを持っているのは当たり前で、企業は生き残りをかけてグローバル化に対応している時代に、学校はICT化に遅れていても教育の本質さえ追求していれば問題ないという論はまかり通らない。
「少なくとも自分たちがいる時代と、同じ時代の流れの中に学校はいなければならない。中学、高校というと大学のお下がりといった、下に置かれる感覚があるが、広尾学園はICTに限らず時代のもっと先に行ける」という金子氏の言葉が、同校の次のステップアップを期待させる。
(撮影:梅谷秀司)
制作:東洋経済education × ICT編集チーム
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