広尾学園が「生徒を子ども扱いしない」真の理由 進学校化する中で気づいた学校教育の落とし穴

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何より驚いたのは、生徒が自発的に「オンライン授業案内ページ」というサポートサイトを立ち上げた話だ。1度も登校したことのない新入生が、いきなりパソコンやタブレットを操作してオンライン授業に参加するのは無理がある。そこで、オンライン授業に参加する手順をわかりやすく動画で解説するほか、新入生に加えて在校生、さらには先生向けに「問い合わせフォーム」まで生徒がつくったのである。

そもそも広尾学園では、生徒にICT活用におけるルールやマナーは教えるものの、端末の操作やインターネットの使用方法などについてとくに教えることはないという。ICTリテラシーは学びの中で必然的に身に付くもの、わからないことはまず生徒同士、あるいは各クラスに2人いるICT委員に相談して解決するというのが、この9年間で教育のICT活用を進めてきた同校の伝統になりつつある。

金子氏は「教職員がICTに習熟するまで待っていたら、永久にICT環境を整えることはできなかったと思います。本校のICTをリードしているのは、間違いなく生徒たち。これまでも広尾学園では、教員が引っ張るというより、生徒たちに力を発揮してもらってきました。その相互作用で、いろんな活動が生まれて、レベルを上げてきたのです。ICT環境は、そうした広尾学園の魅力の土台になっています」と言い切る。

大人顔負けのサポートサイトの開設もそうだが、広尾学園の生徒たちの活動は年齢の枠、学校の枠を超越している。例えば、医進・サイエンスコースでは年度末に「研究成果報告会」を行っているが、それは学会かと見まがうほどのハイレベルな内容になっている。また英語を得意とする有志生徒が集まって、世界のトップ大学・大学院が無償提供するオンライン講義の翻訳を公開するといった活動もある。

iPS細胞の研究ができるなど充実した設備が整う

「従来の学校教育は、勉強と部活と学校行事に一生懸命取り組めば、いい大学に進学できる。だから頑張れというものでした。しかし、この枠の中で必死になっていても、それは国内の進学校の後追いにすぎません。本当に私たちがやるべきことは、生徒たちの将来につながる体験やチャンスの提供と、学びに必要な環境づくりだと、進学校化を進める中で気づきました」

グローバルで評価は当たり前、時代遅れは許されない

そのポイントは、生徒に本物をぶつけること。中学生だから、高校生だから、と絶対に子ども扱いせずに、あえてハイレベルなものに触れさせることが大切だという。そういう環境を学校が用意すれば、想定以上の反応が生徒から返ってくるというのだ。

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