前・麹町中の工藤校長、私立で大胆改革の中身 「学びのスタイル」一律にしないのがポイント
一斉授業についていけないと落ちこぼれと扱われ、ついていけるような訓練が施される。もちろん、乗り越えられる人もいますが、そうでない人もいます。学ぶスタイルは自由でいいのです。大事なことは、それぞれの子どもたちが主体的に学べるように授業内容や教員の意識を変えることです」

多様な特性を持った子どもそれぞれに応じた学びを実践する、まさに個別に最適化された学びを実現するには、当然ICTは効果的なツールというわけだ。にもかかわらず、日本の教育現場ではなかなかICT化が進まない。
「日本ではリアルか、オンラインかというように、いつも二項対立で考えようとします。しかし、それは意味を成しません。もしオンラインがあれば多くの子どもたちを救うことができます。例えば、リアルな授業を受けられない病院の院内学級の子どもたちもオンラインならば、主体的な学びを受けることができるはずです。問題があれば改善すればいい。問題が発生するのを前提に前に進むべきなのです。
そんな時代になっているのに、いつまでも失敗しないように完全な施策のあり方を議論し、それが結局は実行されない。日本は最上位目標に合意していない国です。もし最上位目標が合意されていれば、リアルか、オンラインかの議論はなくなるはずです。教育における最上位目標とは何なのか。そこを考えることが必要なのです」
ICTによって授業スタイルも変わったという工藤氏。これから新たな学校のつくり方について、どのように考えているのだろうか。
「オンラインの授業では、教員たちはほとんど板書することができなくなりました。その影響もありますが、授業時間を40分に短縮して実施したにもかかわらず、予想以上に中身の濃い授業ができたと言っています。新たな授業方法をせざるをえなくなったことで、一方的に知識を教え込む授業から、生徒が主体となる授業のあるべき姿について、改めて教員それぞれが研究したからです。
これからも、学校改善のやり方は麹町中のときと変わりません。最上位目標をつくって、みんなが当事者として変えていこうという意識があれば、いろいろな人間からアイデアが生まれます。
横浜創英では働き方改革から制度、環境整備、風土づくりまであらゆることにチャレンジしていきます。その意味でICTは、欠かすことのできない重要な1つの道具になります。現在、GIGAスクール構想が全国で展開中ですが、ICT化をきっかけとして『誰一人置き去りにしない学校』づくりにつなげていきたいものです」
(撮影:梅谷秀司)
制作:東洋経済education × ICT編集チーム
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