前・麹町中の工藤校長、私立で大胆改革の中身 「学びのスタイル」一律にしないのがポイント

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なぜ、そうすべきなのか。まず今は、学ぶべきカリキュラムが増えすぎて、知識注入型では、学ぶ側のタイムマネジメントが困難になっているという現状がある。そして、もう1つは、大学受験を目標とした一斉授業型の学習法が限界を迎えているからだという。

「知識を与え続けられるだけの学びは、子どもたちの主体性を奪ってしまいます。本来、世の中のスタイルは、何でも対話が基本で双方向であるはずです。ただ、今になって突然、子どもたちに対話を促してもうまくいきません。受け身の学びのスタイルに慣れてしまっているからです。

教育先進国のフィンランドが行った教育改革のように、もし学ぶ側にカリキュラムや学び方を主体的に選ぶ権利があれば、学ぶ側は確実に能動的な姿勢に変わっていきます。そうすれば、自分から対話を始め、学び合う。そんな子どもたちに変えることができるのです」

麹町中「教えることをやめた」結果とは……

実際、麹町中では、数学の授業のみ3年間「教えることをやめた」という。つまり、一斉授業をいっさいやめたのだ。

その代わり、AIソフトウェア「Qubena(キュビナ)」を使い、タブレットなどで子どもたちが自律的に学べるように授業の方法を変えた。子どもがタブレットに手書きで解答を入れると、解答までの時間や誤答パターンを認識して、AIが指摘してくれたり、説明をしてくれる。AIの説明でわからなければ、子どもたち同士で話し合ったり、先生に質問したりするといったスタイルに学校の授業を生まれ変わらせたのだ。

「落ちこぼれている子どもは、もともと質問する力がありません。しかし、AIを媒介とすることで質問するきっかけをつかむことができます。子どもたちの学びのスタイルはバラバラですから、一見授業風景はカオス状態ですが、子どもたちは通常の授業とは異なり、それぞれタイムマネジメントを行って自ら効率的に学びます。例えば、中1で140時間かかるカリキュラムを早い子では20時間で終える。遅い子でも70時間、規定の半分程度の時間ですべての子どもたちが学びを終えることができたのです。その意味でも、これから時代が大きく変わっていく中で、学校は子どもたちが主体的に学べるような環境を整える必要があると考えています」

そのポイントは、学びのスタイルを一律にしないことにあるという。読み書きの学びが得意な子どももいれば、聞いて話す学びのほうが得意な子どももいる。そうした自分の得意を伸ばす、あるいは補完するためにICTを“文房具のように”扱うことが重要なのだ。

「日本の小中学校のように板書が中心の授業は、海外ではほとんど見られません。それを今も大学の教育学部では教えているのです。また読解力向上策として本を読むことだけが優先されるのも、いかがなものか。私自身、読書感想文を書くことが苦手でした。それなりの文章が書けるようになったのは、ワープロが登場してからです。日本の学校では得てして1つの成功事例をヨコ展開し、押し付けようとする傾向があります。

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