電車から「週刊誌広告」を排除した阪急の美意識 車両や運営施設に共通する「高級ブランド戦略」

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芸能人のゴシップや政治家のスキャンダル、中には性的な内容を匂わせるものもある。雑誌の内容はともかく、老若男女が利用する場に掲載する広告としてふさわしくない、という考え方も一理ある。

阪急電車の車内はどことなく高級感が漂う(筆者撮影)

もちろん、他の鉄道会社も広告の内容を事前にチェックしており、各社の基準で掲出の可否を判断しているのだが、雑誌を宣伝したい出版社側はそのギリギリのラインをついてくる。こうしたやりとりを避けるため、阪急は週刊誌の広告を一律に断っているのだ。

他社の状況を見るに、週刊誌の広告で得られる収入は少なくないだろう。それでも、収入よりも車内の雰囲気を重視する。それが阪急なのである。

宝塚歌劇団と阪急百貨店

阪急と言えば、京阪神の人々や鉄道ファンにとっては「マルーン色の電車」で知られている。一方、全国的に有名なのは、宝塚歌劇団だろう。すでに100年以上の歴史を持ち、多くのスターを生み出した宝塚歌劇団は、阪急電鉄の直営事業だ。

大阪梅田駅直結の阪急百貨店。人気ドラマではメガバンクの「大阪西支店」の設定で登場した(筆者撮影)

宝塚歌劇団の結成は、阪急が宝塚エリアを一大行楽地としてもり立てようとしたのがきっかけである。もともと温泉地として知られていた宝塚に、阪急はそれまでとは違うローマ風の温泉施設を建設したのに続き、当時は斬新だった室内プールを開業させた。

だが、室内プールはうまくいかず、早々に撤退。そこで、その場所をステージや客席として活用し、宝塚歌劇団の前身である宝塚唱歌隊を結成して、新たな娯楽を提供した。こうした経緯から、団員は現在も阪急電鉄の社員という身分だ。

また、グループ会社の阪急百貨店は京阪神だけでなく東京や横浜、博多にも進出しているが、その起源である現うめだ本店は、日本で初めて鉄道会社が運営したターミナルデパートである。

そのころ、デパートは町の中心にあるのが普通で、町はずれにある鉄道駅に隣接したものはなかった。これに対し、阪急は駅とデパートを一体化させることで、鉄道利用につなげるとともに、デパートを立ち寄りやすいものに変えようとした。

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