格安品台頭で急変する化粧品市場、岐路に立つ大手各社の高付加価値戦略

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 主力である2000円以上の化粧品が苦戦する一方で、「3ケタ(1000円未満)に強いブランドがない」(資生堂の原田康彦専務)ために低価格品の需要を取り込めていないことが要因だ。

ただ各社とも手をこまぬいているわけではない。カネボウは08年から、全国に強固な販売網を持つ花王と連携してドラッグの営業体制を強化。花王では、売り場作りの専任部隊が各店舗を訪れた際、カネボウの売り場も整備する。資生堂やコーセーはドラッグのチェーン別に営業組織を編成。各チェーンに合ったブランドや陳列方法などを提案する。

一方で、値下げによる価格競争には慎重だ。これまで対面販売で稼いできたため、利幅の薄い低価格品が増えてしまうと人件費を賄いきれなくなる可能性があるからだ。

また「ブランドはあこがれの対象であるべき、という考えがあり、低価格品の展開には難しさを感じているのだろう」と、ゴールドマン・サックス証券の田中克典アナリストは話す。

そこで、高価な乳液や美容液を強化する。美容液などは「付加価値が求められており、差別化しやすい」(カネボウの渡辺氏)とあって、メーカーが得意とする分野。低価格品のシェアも低いため、これを足掛かりに化粧水との相乗効果をうたい、利用者を囲い込もうという考えだ。また、カネボウは50代を対象とした「エビータ」を強化。コーセーは昨年冬にオーガニック素材を使った「ネイチャーアンドコー」を立ち上げるなど、年齢や嗜好により特化した商品にも力を注ぐ。

大手各社は「景気が回復すれば中価格品の需要も戻る」と口をそろえる。ただ、低価格品の質が向上する中で、大手の付加価値戦略はどこまで通用するのか真価が問われる。


(島田知穂 撮影:吉野純治 =週刊東洋経済)
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