
「私は、小学1年生で違和感を感じて、いったん日本の教育システムから離れました。しかし、その違和感がいったいどこから来るものなのか、対峙してみないと理解することができないと思ったのです」
日本の教育を変えようと中2で起業を決意、出資元も自分で見つける
新しく入り直した中学校では、日本の教育の改善策を探るとともに、新しい教育モデルを提案しようと中学2年生の時、起業を決意する。
「社会の仕組みをもっと早く知りたいと思ったことも、起業の動機の1つでした。起業の資金については、たまたま通っていた合気道の先生が投資家の方で、起業プランを説明し、出資してもらいました。両親は、普通の会社員と主婦ですが、“なぜ起業したいのか、その理由がはっきりしているなら応援する”と言ってくれました。恵まれていますよね(笑)」
アルバイトが禁止されている学校だったので、給与にはストックオプションを取り入れるなど、仕組みづくりには腐心したそうだ。実際始めてみると、理想と現実の壁にぶち当たることもあったが、周囲の理解や、応援してくれる仲間の輪が徐々に広がっていき、一つひとつ乗り越えていったのだという。

そして、高校1年の時には、母校である「湘南インターナショナルスクール」を買収し、経営するに至る。
「これは、健全経営のために介入するという形で友好的な買収ですね」
子どもたちには、自分の理想を語れる人になってほしい
仁禮さんはその後、2016年に2社目となるHand-C(現TimeLeap)を設立、現在は大学をいったん休学し、「TimeLeap Academy」の事業に注力している。
「『TimeLeap Academy』では、小学5年生から高校3年生までを対象に起業家としての体験を通して、社会や自分について理解するという、“自己認識”“社会接続”“才能発揮”の3つを柱としたオンライン起業家体験プログラムを提供しています。
もともとは通学型のスクールとしてスタートしたのですが、コロナ禍を機にオンラインに切り替えたことで、全国から受講生が集まるようになりました。申し込みが多数あった中で、現在は選抜された27名の生徒が学んでいますが、実際、子どもたちの反応もよく、これからさまざまな充実したコンテンツを提供していきたいと考えています」
そんな仁禮さんの強みは自分の理想を語ることなのだという。
「実際のビジネスでは、つねに答えのない問題ばかりに直面し、本当にこれでいいのかと苦しむこともあります。でも、起業家の役割は自分の理想を持って、新たな社会への扉を開いていくことにあると思っています。その意味でも、この『TimeLeap Academy』の事業を通して、日本の教育を変えていくきっかけを提供したいですし、子どもたちには、自分の理想を語れる人になってほしいと思っているのです」
日本の教育はもっと多様化すべき、すべては自己を知ることから
では、仁禮さんが考える日本の教育を変えるために今必要なものとは何だろうか。
「日本の教育はもっと多様化すべきだと考えています。そのためにも、今は教育の振り幅をどこまで広げることができるのか。そのモデルケースをどんどん出していく時期なのではないかなと思っています。もしモデルケースがなければ、実際にどんなことができるのかもわかりません。国内の学校でも新たな取り組みを行っているところはたくさんありますが、学校の先生たちは授業以外にやるべき仕事があまりにも多すぎて、時間が足りません。
その解決策としては、先生たちは、本来の仕事にもっとフォーカスして、事務的な仕事を別の人がサポートするような体制を整えるべきだと思います。または教員免許がない専門家でも授業ができるように専門家教員を増やす方法もあると思っています」