小学生1人1台PC時代に学校は何を教えていくか 日本で「学校のICT整備」が進まない構造的原因

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

こうした事態を受け、2019年度から23年度にかけて進める予定だったGIGAスクール構想を前倒ししようと、さらに2292億円の補正予算がつきました。このような背景から、多くの自治体が真剣にICT導入の検討を行っていますが、ICTを整備すれば即、教育的効果があるとは限りません。大切なのは、パソコンを使ってどんな教育を行うのか明確にすること。そのうえでどんなデバイスを使うのか、デジタル教科書も一緒に導入するのか、といったことも検討しなければなりません。

教室でみんながネットに接続でき、授業でパソコンを活用できるように台数をしっかりとそろえることも重要です。ですから私は「民間企業並みのICT環境を目指しましょう」とお伝えしています。

情報活用能力の有無で進学や就職に差が出る

ICT環境が整ったら、まずは子どもたちがパソコン操作に慣れることを目指しましょう。そのために必要なのは、たくさん経験させることです。

では、具体的に授業でどう使うか。例えば、「なぜ梅雨にたくさん雨が降るか」をネットで調べて発表する、という場合。子どもたちが自分で調べ、どの情報が正しいのかという比較や議論を行い、レジュメにまとめて発表する。これらを子どもたち自身がすべてやるとなると、時間がかかります。先生が教えたほうが効率はいいでしょう。しかし、新学習指導要領が大切にしているのは、教科の内容だけではありません。学び方、議論や発表の仕方といった、社会で生きるうえで基盤となる能力を育てることが求められているのです。

とはいえ、これまでも、子どもたちに考えさせる授業を行っていた先生は多いはず。そうした先生が紙で労力をかけて行っていたことを、これからはパソコンを使ってやりましょう、ということなのです。

子どもたちが1人1台パソコンを持っている状況に、先生も初めは緊張するかもしれません。しかし、先生は普段から子どもの様子を見て教え方を調整しているはず。2〜3回経験すれば、「ここは子どもに任せて、ポイントは自分が教えよう」といった具合に自然に授業を進められるようになるでしょう。ICT導入について、先生はそれほど心配しなくても大丈夫だと私は考えています。

だからこそ、自治体の担当者の方にはぜひ、ICT整備を進めてほしいですね。教育の情報化のために国から総額約4600億円もの補正予算がつくのは、おそらくもうないでしょう。もちろん自治体の負担は生じますが、この機会を逃せばすべて自前で用意することになるでしょう。

今後は資格試験や大学入試などでもCBT(コンピューターで受験する方式のテスト)の導入が進むはず。大学ではすでに受験の出願や履修登録などをパソコンで行うようになっており、パソコンスキルは必須です。

ICT整備を先送りにすれば、その地区のお子さんたちは新学習指導要領で目指す能力が身に付かず、落ちこぼれる可能性もあります。情報活用能力の有無は、進学や就職の際に大きな影響を与えるのです。

そして、コロナ禍によって民間企業ではリモートワークが進みました。今後は住みたい街に住み、必要なときだけ出勤や出張をするというライフスタイルを選択する人が増えるでしょう。そんなとき、教育サービスの充実度は街選びの重要ポイントになるはずです。各自治体は、より積極的にICT整備をはじめとした教育サービスの充実に力を入れていく必要があるのではないでしょうか。

制作:東洋経済education × ICTコンテンツチーム

東洋経済education × ICT

小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事