松本大・マネックスグループCEO--あきらめ感が支配している?《私のアラサー論》

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 だから30歳前後の世代が利益追求一本やりを嫌って、教育やNPO(非営利組織)の分野に活路を見いだそうとするのもある面では理解できる。今の組織の中では自己実現ができないと考えるのだろう。

仕事を通じた成長実感もないし満足感もないから、別の道を探す。今とは別に自分の進むべき道があると考える。組織で上にいくより、横に出て(組織を出て)、自己実現をしようとする。たとえば20代のときにマッキンゼーとか外資系投資銀行にいたけど、今はボランティアをしているとか。

でも厳しいことを言えば、自己の満足という点で、それは長続きしないと思う。私は有限なリソースを集中して掘っていくべきだという考えで、自分が決めた仕事や業種に徹底的にこだわって、そこで成果を出そうとする。どこへ行こうかと迷うより、まずは歩いていれば違った風景が見えてきて、違った展開があるかもしれないと私は考える。

彼らにしてみれば、どこかあきらめ感があるのかもしれない。しかし少数では、影響力はおのずから限界がある。時間がかかっても組織を束ねてエネルギーを出したほうがいい。

組織の中で上がっていって動かすことより、個人個人が動いて社会を動かすというのは、時代の流れに合致しているのだろう。

でもこうした動きは若者の価値観というよりは、社会全体の価値観の反映なのだろう。それを実行できるのが、若い世代というだけのことかもしれない。
 
まつもと・おおき
1963年生まれ。東大法学部卒。ソロモン・ブラザーズ、ゴールドマン・サックスを経て99年マネックス証券(現マネックスグループ)を設立。東京証券取引所グループ社外取締役。

(週刊東洋経済 撮影:吉野純治)

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