超訳 古事記 鎌田東二著
稗田阿礼(ひえだのあれ)が口述し、太安万侶(おおのやすまろ)が書き留めた古事(ふること)の世界を、現代に作業として再現したらどうなるか。旧年の真夏、1日は自宅、1日は出版社の、いずれも畳の上に寝そべりつつ目をつぶり、記憶とイメージのままに語り歌い、編集者が記録して本書は出来上がったという。抄訳でも意訳でもなく、著者によれば「超訳」が生まれた。内容は上巻の神話部分、天地開闢(てんちかいびゃく)から神武天皇の出生までだが、古老による語りの形をとらず、著者は地の「である」調と話し言葉では「です」調も織り交ぜつつ一気呵成に自由語りする方法を選んだ。
興の趣くままに語った結果として、抜き語りになっている個所も当然あり、イメージが飛翔するがごとき個所もあって、読者は古事記の世界に奔放に誘(いざな)われ遊ぶことを得るだろう。三浦佑之『口語訳 古事記』(文藝春秋)によって全文と注釈を併せ読めば、興趣、理解はいや増すはずである。「鎌田阿礼」による中・下巻訳も期待したい。(純)
ミシマ社 1680円
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