【産業天気図・人材サービス】企業業績悪化と派遣法改正の挟撃、「雨」続きビジネス存続の岐路に
09年10月~10年3月 | 10年4月~9月 |
人材サービス業界は、2010年9月まで終始「雨」が続く見通しだ。不況が長引く中、企業の派遣需要の落ち込みによる業績悪化から抜け出せない。
パソナグループ<2168>やテンプホールディングス<2181>など一般事務を主体とする人材派遣(登録型派遣)大手が不調。メイテック<9744>やアルプス技研<4641>など技術者派遣大手も自社内に余剰人員を抱えこんだまま、雇用調整助成金収入で辛うじて人員削減を回避している状態だ。日雇い派遣大手のフルキャストホールディングス<4848>は、不採算事業からの撤退および業務請負などアウトソーシングへの業態転換により、生き残りに懸命だ。製造派遣大手のUTホールディングス<2146>は、ノンコア事業切り離しおよび請負形態へのシフトに踏み切っている。
人材サービス業界は、まさに業界構造の転換を迫られている。2008年末に電機・自動車業界での「派遣切り」続出が社会問題化した後、09年6月には民主党など3党(現在の3与党)が製造業派遣の禁止などを盛り込んだ労働者派遣法改正法案を国会に提出。いったん廃案になったものの、長妻昭厚生労働相が10年通常国会での派遣法改正方針を打ち出したことで、ビジネスの存続そのものが危ぶまれる状況だ。
生き残りの方策として打ち出されているのが、業務請負会社への転換または人材紹介・期間工管理など雇用を伴わない形態だ。前者については、高収益が期待できる一方、社員の雇用や品質、納期順守などいっさいのリスクを抱えこむため、すべての人材サービス企業が対応できるわけではない。また、後者の人材紹介や期間工管理などはマーケット規模そのものが未知数だ。
業界からは「このままでは、政府の規制強化によって貸金業と同様の運命をたどるのではないか」との指摘も出ている。社員の雇用保障を行いながら、きちんと利益が出るビジネスモデルの構築は容易ではない。しかし、そのナローパスを歩むことができる企業だけが生き残る時代が到来したと言えそうだ。
(岡田 広行)
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