動き出すSL銀河、飛躍への期待と課題 東北復興の起爆剤へ、42年ぶりに復活
もっとも、ななつ星の1人当たり料金は最低でも18万円だが、SL銀河の乗車に必要な金額は乗車券(花巻―釜石間なら1620円)と指定席券(820円)合わせても2440円。仮に全席が埋まったとしても1回の運行で得られる運輸収入は40数万円にすぎない。採算性は度外視しているといってもよい。
魅力的な車両
SLが牽引する車両のデザインは工業デザイナーの奥山清行氏が担当。『銀河鉄道の夜』の世界観をモチーフにしたという。夜空を思わせる青い塗装に星座や沿線に生息する動物をちりばめた外観は、確かに、これから銀河鉄道に乗って星の海へ飛び立つような気分にさせる。
各車両にはギャラリーが設けられており、宮沢賢治ゆかりの品々や南部鉄器をはじめとした東北の名産品が展示されている。眺めているだけで楽しくなり、車内で販売されたら飛ぶように売れるだろう。また、JRでは初となるプラネタリウムも設置されている。定員8人で、約10分の映像を楽しむことができる。
ユニークなのは、乗客が乗る車両が客車ではなく、ディーゼルエンジンを装備した気動車であること。機関車が牽引するのは動力を持たない客車というのが通常のパターンだが、釜石線には勾配のきつい区間があり、牽引に支障が出るリスクを考慮して、自力走行が可能な気動車を客車として使うことにした。
「客車と呼んでも間違いではないが、当社では“旅客車”と呼んでいる」(JR東日本)。旅客車のアシストは急勾配区間のみに限定される予定だが、自力走行という利点を生かせば、将来はSLが走れない他路線を旅客車のみで走ることも可能だ。魅力的な車両だけにSL抜きで運行しても人気となるに違いない。
近代製鉄業発祥の地である釜石にとっても、SL銀河への期待は大きい。釜石の駅前には、日夜を問わず高い煙突から蒸気を吐き続ける新日鉄住金・釜石製鉄所の威容が広がる。「鉄の町」釜石へ「鉄の塊」であるC58が乗り入れる様は壮観だ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら