水の未来 フレッド・ピアス著/古草秀子訳
世界で10億以上の人々が、安心して飲める清潔な水を手に入れる手段を持たずにいる。飲料水ばかりでなく、農業を維持する水も使い果たされようとし、随所で川は干上がり、湖は底を見せ、地下水は枯渇しつつあるという。「このままでは、人類の胃袋を満たす食料生産は危うい」と、「人類最大の環境問題」に環境ジャーナリストの著者が警鐘を鳴らす。
なぜ、「水の危機」が人類最大の環境問題なのか。食料生産には大量の水を必要とし、水の観点からすれば、食料の貿易は実質的に水の輸出入と同じで仮想水(バーチャル・ウォーター)(英・アラン教授の命名)貿易だと考えるからだ。食料自給率の低い日本は実は「水の輸入大国」であるということになる。
著者の精力的な取材には脱帽のほかない。しかも各地の詳細なリポートをベースにしながら分析はあくまで(循環をベースに考える)水文学(すいもんがく)の見地から冷静だ。渇水リスクに加え水被害の視点に目配りを怠らない。
日経BP社 2415円
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