なぜ、アメリカ経済は崩壊に向かうのか チャールズ・R・モリス著/山岡洋一訳
原題は「1兆ドル融解」とあり、現在進行している未曾有のグローバル金融危機の深淵に迫った野心作。3月の原書出版時点では常識外(著者は比較的穏当な試算と判断)だった原題にある予測数字(資産評価損と債務不履行の総額)が、今や瞬く間にそれを上回る事態に至っている。
しかも、損失が証券化商品によって、広く世界の金融市場にまき散らされ、なおどこにどれだけあるのか把握しきれていない。本書によれば、この事態はもともと、規制当局の監督外で、専門家による依頼人の利益に反する行動が横行し、しかも過度の金融工学依存の投資判断によって、膨らみに膨らんだ信用バルブの崩壊だけに、金融秩序の回復は一筋縄ではいかない。
著者は元バンカー、最近まで証券化商品の設計や価格評価に使うソフトウェア開発会社の経営者だっただけに、CDO(債務担保証券)をはじめ問題の金融商品の開発過程とからくりに詳しい。
日本経済新聞出版社 1890円
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