奇跡のリンゴ 石川拓治著
無農薬農業が容易でないことは想像できるが、リンゴの無農薬栽培は想像を絶している。主人公の木村秋則さんが30年近い苦闘の果てに成功させても、まだ信じようとしない農家は多い。それほどリンゴは病虫害に弱い果樹である。
2年前にNHKが放送したドキュメンタリー映像は強烈だった。本書では、壮絶な生きざまを今度は文字でえぐることで、深みと広がりをもったもうひとつの木村ワールドが展開される。それにしてもここまで徹する人生には思無邪(おもいよこしまなし)の言葉こそがふさわしい。
読後感がさわやかなのは、木村さんの純粋さに加えて、狂気ともいえるその行動を支える家族や隣人やバイト先の人たちなどちょっと良い話がちりばめられているからだろう。無垢の心でリンゴの木になり切ったとき無農薬のカギが見つかる、という示唆は重要だ。一読すれば、木村さんのリンゴを食べたくなるだろう。人間と自然について学ぶことも多い。(純)
幻冬舎 1365円
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