JR東日本「主要100駅」乗客増減率ランキング 1位大崎駅、100位渋谷駅…経済トレンド映す

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住みたい街として近年人気の武蔵小杉駅(神奈川県川崎市)は23.6%増と3位につけた。同駅周辺は、戦後から京浜工業地帯に連なる大規模な工場地帯だったが、2000年代に工場の移転・閉鎖が相次ぎ、その跡地にタワーマンションやファミリー向け商業施設が次々と林立。通勤時間帯の混雑は激しいものの、JR横須賀線で東京駅まで18分の利便性をうたい、仕事や子育てに忙しい共働き世帯が急速に流入している。

また、地域別でみると、昨今顕著なのはこれまで住宅地としてのブランド力が弱かった東京の東部エリアへの人の移動だ。「ここ数年、交通利便性がよく住宅価格も安いのに、過小評価されてきた“穴場”の駅で物件を探そうという感覚が強まっており、東京の西部よりも東部の物件が選ばれる傾向にある」。東京カンテイの井出武上席主任研究員はそう解説する。

京成金町線が乗り入れるJR常磐線の金町駅(葛飾区)は15.4%増と東京東部で伸びた代表的な駅。下町風情が漂う駅前風景に一見馴染まないタワーマンションが駅南側にそびえるほか、駅から徒歩約10分の工場跡地には、総数840戸の大型マンションが「3LDK3790万円から」と八王子などの郊外マンションと同水準の価格をうたって販売されている。そのほか、5路線が乗り入れターミナル駅として交通利便性の高さが人気の北千住駅(足立区、10.4%増)やJR総武線の錦糸町駅(墨田区、7.1%増)なども健闘した。

近年は首都圏への人口流入が続いていることに加え、比較対象の2011年度は東日本大震災が起こり、全般的に鉄道利用者数が落ち込んだため、増減率はプラスの傾向が強まっている。そうした中でも、乗車人員が増えずに停滞している「沈む駅」もある。

下位で目立ったのは、近年目立った再開発がなく、交通アクセスがよくない駅が多い。72位の八王子駅(八王子市)は、大学キャンパスの都心回帰の動きも受け、乗車人員数が停滞。同じ多摩地方の主要駅ながら、再開発が継続的に行われ伊勢丹や髙島屋が駅前に残る立川駅(立川市、48位)とは対照的に、百貨店が軒並み撤退し駅前の活気は失われている。

駅のイメージと乗車人員増減率でギャップが大きいのは吉祥寺駅(武蔵野市)だろう。住みたい街ランキングなどの民間調査で上位が常連の同駅だが、3%増の84位と低水準だ。不動産の専門家は、同駅周辺の高齢化を指摘する。「吉祥寺は若者の街のイメージが強いが、戦後住み着いた団塊世代が多く、高齢化率が高い。駅周辺も建築物の高さが制限され、タワマンが立ちにくく、新しい住民が流入しづらいのもネック」(不動産コンサルタント)。

最下位だったのは7.8%減の渋谷駅(渋谷区)。13年に東急東横線と東京メトロ副都心線が相互乗り入れを開始し、乗り換え客が減ったことが主因だ。品川駅に抜かれ乗降人員がトップ5から脱落したことは、テレビの報道やネットニュースなどでも話題となった。渋谷駅は19年に超高層の新駅ビルが完成予定。乗り換えの不便解消に向けた工事も進められ、挽回を期している。

多くの人が毎日利用する駅は、社会の縮図。乗車人員数の増減からは駅の経済トレンドが浮かび上がる。

『週刊東洋経済』12月4日発売号の特集は「駅・路線格差」です。
秦 卓弥 東洋経済 記者

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はた たくや / Takuya Hata

流通、石油、総合商社などの産業担当記者を経て、2016年から『週刊東洋経済』編集部。「ザ・商社 次の一手」、「中国VS.日本 50番勝負」などの大型特集を手掛ける。19年から『会社四季報 プロ500』副編集長。21年から再び『週刊東洋経済』編集部。24年から8年振りの記者職に復帰、現在は自動車・重工業界を担当。アジア、マーケット、エネルギーに関心。

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