新型新幹線「見た目」が変わり映えしない理由 「N700S」は現行の「N700」とどう違う?

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グリーン車の車内モックアップ。客室扉上の車内テロップは大型・カラー化される(撮影:尾形文繁)

客室の扉の上にある車内テロップは画面サイズが5割大きくなり、フルカラー液晶になったことで視認性は格段に高まった。また、荷物棚に荷物を置き忘れる乗客が少なくないことから、停車駅が近づいた際に荷物棚の照度を上げ、置き忘れがないように注意を促すという細かい配慮もしている。ただ、「実際に一般の乗客を乗せて試験をしたわけではない」(同)とのことで、現時点の効果は未知数だ。

このように、内装については大きく変わったものはなく、細部の改善にとどまっているが、その積み重ねが乗り心地の改善につながるのかもしれない。

「変わらない安心感」が重要

取材の最中、福田氏のネクタイの柄が新幹線であることに気づいた。今日の日に合わせてこのネクタイを選んだのは明らかだ。

質問に応じるデザイナーの福田哲夫氏(撮影:尾形文繁)

報道公開終了後、福田氏に「ネクタイがN700Aの柄ですね」と、こっそり聞いてみた。福田氏は「よくお気づきになりましたね」と答えた後、一瞬間をおいてこう言った。「これはN700Aではありません。700系が完成した当時に作られたネクタイです」。

てっきりN700Aだと思っていたネクタイの柄は、実はずっと古い700系だった。しかし、ぱっと見ただけでは区別がつかない。そこに福田氏の真意があった。「観光客のように新幹線にたまにしか乗らない人にとっては、東海道新幹線のイメージは白地に青線。この新幹線に乗れば京都や大阪に行けるという安心感が重要なのです」。

JR東日本では新しい新幹線車両が登場するたびにそのデザインが話題となるが、JR東海は白地に青という配色をかたくなに守り続ける。2027年に運行開始するリニア中央新幹線の営業車両「L0系」も白地に青線という車体配色は変わらない。利用者にとって白地に青線が安心のシンボル。ただ、最近では今年6月には架線が切れて運休するトラブルはあった。JR東海は「想定外のトラブル」としたが、「白地に青=安心」という利用者の信頼に応えるためには、安全運行への手抜かりは許されない。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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