実は首都圏にまだある「全車冷房なし」の路線 乗ってみると意外に暑くない?
ただ、数字の割には暑さをあまり感じなかった。送風と窓からの自然換気で、空気がうまく循環していたのだろう。所要時間も1周わずか14分。途中の駅で降りずに1周して戻る人など皆無に近いから、実質的な乗車時間はもっと短くなる。これなら許容できる範囲と思う。
冷房装置を搭載しなかったことについて、山万鉄道事業部の小谷訓弘部長は「(1982年の開業当時は)今ほど車両の冷房化は進んでおらず、公営鉄道や大手私鉄でも、冷房車はそれほど普及していなかった」と話す。実際、ユーカリが丘駅で連絡している京成電鉄も、全車冷房化を達成したのは1991年。ユーカリが丘線の開業から9年後のことだ。
冷房装置は「必ず搭載するもの」という社会的コンセンサスが当時はなく、それが冷房装置の非搭載という判断につながったのだろう。
「特殊な車両」冷房化は困難
また、ユーカリが丘線は輸送規模に合わせて小型の特殊車両を採用した。そのため「冷房装置を搭載する技術面・コスト面で課題が大きく、実現が難しかった」(小谷部長)。現在も技術・コストの両面で搭載は難しいとするが、ユーカリが丘駅のホームに冷房装置付きの待合室を設置するなどして旅客サービスの向上を図っているという。
ユーカリが丘線を頻繁に利用している方にしてみれば、それでも冷房車を導入してほしいという思いがあるかもしれない。ただ、私のような余所(よそ)者の鉄道マニアからすると、ユーカリが丘線は「暑い列車」を体験できる、貴重な場でもある。
いずれは技術・コストの問題を解決した、冷房付きの新型車両がデビューする日がくるだろうか。そのときは、現在の車両も1編成だけ動態保存し、夏季には「懐かしの非冷房車」として運転してみてはどうかとも思う。一介のマニアの妄想にすぎないが。
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