実は首都圏にまだある「全車冷房なし」の路線 乗ってみると意外に暑くない?

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車内の温度(7月16日13時09分)は35度を超えた。数字の大きさの割にはあまり暑くなかった(筆者撮影)

ただ、数字の割には暑さをあまり感じなかった。送風と窓からの自然換気で、空気がうまく循環していたのだろう。所要時間も1周わずか14分。途中の駅で降りずに1周して戻る人など皆無に近いから、実質的な乗車時間はもっと短くなる。これなら許容できる範囲と思う。

冷房装置を搭載しなかったことについて、山万鉄道事業部の小谷訓弘部長は「(1982年の開業当時は)今ほど車両の冷房化は進んでおらず、公営鉄道や大手私鉄でも、冷房車はそれほど普及していなかった」と話す。実際、ユーカリが丘駅で連絡している京成電鉄も、全車冷房化を達成したのは1991年。ユーカリが丘線の開業から9年後のことだ。

冷房装置は「必ず搭載するもの」という社会的コンセンサスが当時はなく、それが冷房装置の非搭載という判断につながったのだろう。

「特殊な車両」冷房化は困難

また、ユーカリが丘線は輸送規模に合わせて小型の特殊車両を採用した。そのため「冷房装置を搭載する技術面・コスト面で課題が大きく、実現が難しかった」(小谷部長)。現在も技術・コストの両面で搭載は難しいとするが、ユーカリが丘駅のホームに冷房装置付きの待合室を設置するなどして旅客サービスの向上を図っているという。

ユーカリが丘線を頻繁に利用している方にしてみれば、それでも冷房車を導入してほしいという思いがあるかもしれない。ただ、私のような余所(よそ)者の鉄道マニアからすると、ユーカリが丘線は「暑い列車」を体験できる、貴重な場でもある。

いずれは技術・コストの問題を解決した、冷房付きの新型車両がデビューする日がくるだろうか。そのときは、現在の車両も1編成だけ動態保存し、夏季には「懐かしの非冷房車」として運転してみてはどうかとも思う。一介のマニアの妄想にすぎないが。

草町 義和 鉄道プレスネット 記者

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くさまち よしかず / Yoshikazu Kusamachi

1969年新潟県南魚沼市生まれ。鉄道ニュースサイト『鉄道プレスネット』を運営する鉄道プレスネットワーク所属。鉄道誌『鉄道ファン』『鉄道ジャーナル』などでも記事を執筆。著書に『鉄道計画は変わる。』など。

 

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