アメリカに犬はいない 武井義雄著
変な書名かもしれないが、中身は軽妙な異文化エッセイ。米国籍を持つ在米40年の医師、しかし日本的なものもいつまでも消せない、自称ハイブリッド人間が、おかしな国日本、わかりにくい国アメリカを実体験の中で論じた日米比較文化論である。
渡米直後のカルチャーショック、何十年ぶりに里帰りした日本での珍妙な体験、どちらが真っ当か、もちろん判断しようもないのだが、日米が本質的にわかり合うのは至難だと改めて感じる。次々登場するエピソードには思わず笑ってしまうが、実は笑っていられないものが多いというのは笑い事ではない。
医学教育に端を発するお寒い日本の医療の現状を考えるうえでも参考になる。英語と日本語をめぐる社会観察や誤解の数々も話題豊富でなかなかに楽しめた。そこで書名だが、日本には犬、アメリカにはDOGしかいない。これが著者のいちばん言いたかったことだが、その心とは?
日本経済新聞出版社 1680円
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