本格復活?ソニーには追い風が吹いている 平井一夫社長が語る「高付加価値戦略」

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昨年9月発表の中間連結決算では、為替変動という予想しにくい要素もあったが、マイナス77.6%という大幅減益だったこと、さらに今年は複数の不安要素がある。それでも強気でいられるのは、なぜだろうか?

まず、米国がトランプ政権へと切り替わった後、どこまで孤立主義へと走るのかまったく読めない。NAFTA(北米自由貿易協定)は破棄あるいは見直しを迫る可能性が高いとみられ、日本をはじめ他同盟国との貿易に関しても、米国が過剰に防衛的になる可能性は否定できない。また、言うまでもなく英国のEU離脱もリスク要因だ。

しかし、平井氏は「不安定要因はあるが、今の段階で“右左上下”と言えないのは、宣誓後のトランプが何をするかも、英国のEU離脱も詳細がわからない。トランプ氏が大統領就任した後、実際にNAFTAがどうなるのかという話の順番になる。われわれにとって障害となる要素もあるだろうが、現時点でそれが何かは具体的に見えていない。ただ、人の交流、モノの流通などに関して、よりよいビジネス環境をきちんと求めていく」と現時点でリスクを評価することを避けた。

「PlayStation 4」が本格的な"収穫期"に

それでも、冒頭で言及した「営業利益5000億、ROE10%」という目標は自信があるからだろう。理由として平井氏は「エレクトロニクス製品が強くなってきたこと」を真っ先に挙げたが、もっとも大きな増益要因はゲーム事業である。

ゲーム事業はグローバルで見たとき、すでに投資回収が終わっているPlayStation 3が息の長い商品になっていることに加え、PlayStation 4が実売で5300万台を超え、いよいよ本格的な“収穫期”になる。2016年3月期は406億円の黒字だったが、中間決算時に業績を上方修正。売り上げは1兆8000億~1兆9000億円にまで増加し、営業利益率も10%が見込めると発表している。しかし、これもまた古い情報と言えるかもしれない。年末、さらに売り上げを伸ばしたこともあり、最終的な利益さらに上振れする可能性がある。

平井氏は「われわれはエレクトロニクス製品のメーカーだ。そこでの差異化戦略がもっとも重要だ。もちろん、時代はクラウドの時代であり、多くの価値がクラウドに吸い込まれ、製品メーカーにはよいところが残っていないという意見もある。しかし、もっとも顧客に近い位置にあるのは製品メーカーだ。手元に一番近い“ラストワンインチ”を磨き込んで世界中に届けるアイデアとノウハウに強みがある。家電のハードウエアにはもはやイノベーションの余地がないと言われているが、そうではないことをわれわれは昨年証明できた」と胸を張る。

ソニー復活の鍵という“エレクトロニクス製品”というジャンル。一時は“エレキこそ切り離せ”と言われたが、「ソニーには機能や性能を満たす以上の満足を、感性に訴えかけて引き出す力がある。商品の価値を磨き込むことこそが、ソニーという企業、ブランドの価値を決めている」とインタビューのたびに言い続けてきた平井氏は、今後も中期計画の最終年度で自らが正しかったことを証明できるだろうか。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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