ユナイテッドアローズ、「虎の子喪失」の痛手 高級アクセ「クロムハーツ」を手放す理由

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クロムハーツの平均客単価は約13万円。高級感が富裕層をとらえる。芸能人の愛好者も少なくない(ユナイテッドアローズのHPより)

もっとも、日本でのクロムハーツ事業の直近業績である2016年4~6月期(第1四半期)の売上高は、前年同期比14.4%減の26億円と苦戦している。「昨年の値上げ前の駆け込み反動減と、インバウンド(訪日外国人客)需要が一巡した影響が大きい」(ユナイテッドアローズ)。

この14%減のうち、10%減が2015年6月に5~10%程度の値上げを行ったことによる駆け込み需要の反動減、4%減がインバウンド減。為替レート変動によって、9月中旬には一転して値下げに転じる見通しだが、インバウンドの高額需要の停滞もあって、通期で増収を確保できるかは微妙だ。

ユナイテッドアローズは六本木ヒルズで勝負

ユナイテッドアローズ本体の業績も苦戦気味。2016年4~6月期の連結業績は、売上高が前期比2.7%増の329億円の一方で、営業利益は同24.7%減の21億円だった。競合他社が苦しい中でも、2014年3月期に過去最高益を達成するなど“アパレル業界の優等生”と呼ばれていたが、2015年3月期には値上げの失敗から、6年ぶりに営業減益に落ち込むなど、営業利益が急落。その後は業績の足踏みが続いている。現在は価格の見直しや年間8シーズンの季節細分化などで、正価販売につながる服の鮮度を上げながら、本格回復に向けて試行錯誤している最中だ。

そんな中、クロムハーツが譲渡されるまで8年の“猶予期間”を得たことで、ユナイテッドアローズはこの期間内に抜本的な立て直しを図る。竹田社長は「既存事業の収益性向上、ネット通販の拡大可能性の検証、新規事業開発などを推進していく。これらの要素を踏まえ、来期初に中期経営計画、長期ビジョンを発表する」と語る。

価格帯別の業態展開に特徴があるのがユナイテッドアローズ。主力のセレクトショップ「ユナイテッドアローズ」の平均客単価が2万円、「グリーンレーベルリラクシング」のそれが1万円。さらにショッピングセンターなどで展開する「コーエン」が4500円などだ。中でも、10万円を超えるハイエンドマーケットを担っていたのが、クロムハーツだった。

9月22日には過去最大400坪超を有する、巨大な旗艦店「ユナイテッドアローズ六本木ヒルズ店」が増床オープンする。はたして今後クロムハーツの穴を埋めて、再成長の軌道に戻すことができるのか。ユナイテッドアローズの経営陣の手腕が試される。

冨岡 耕 東洋経済 記者

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とみおか こう / Ko Tomioka

重電・電機業界担当。早稲田大学理工学部卒。全国紙の新聞記者を経て東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などにも所属し、現在は編集局報道部。直近はトヨタを中心に自動車業界を担当していた。

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