ISAレースのカギは「口座開設」の簡素化 日本版ISA導入で始まる銀行・証券の口座獲得戦争(2)

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一方、ISAを活用するには、銀行か、証券会社に専用口座を作らなければならない。しかも、そのためには、住民票の提出が必要となる。免許証、健康保険証など本人確認手段が求められる通常の口座開設よりも厳格である。

それだけではない。制度発足当初に必要なのは、13年1月1日付けの住民票である。したがって、その後、転居した人は、転居先の役所から住民票の除票(過去の住所の履歴が証明されているもの)を発行してもらい、銀行などの窓口に提出しなければならない。

住民票をそろえた「非課税口座開設確認申請書」は、銀行、証券会社から税務署へと送られて、それを税務署がチェックし、妥当な場合には「非課税口座開設確認書」が銀行、証券会社を経由し、申請者(利用者)にわたる。

非課税措置のチェックであるため、厳格な手続きとなることは当然だが、それにしても、手続きの煩雑さは否めない。それを解消するには、社会保障・税番号制度の本人確認手段である「マイナンバー制」のような制度が必要であり、「マイナンバー制」の導入が決定されていれば、その証明書のコピーを銀行、証券会社の窓口に提出するだけで手続きは簡便に済んだ。

住民票を最寄りの役場に発行してもらうために訪れるというのは一般には日常的なことではない。したがって、ISAへのテンションが上がってきた銀行、証券会社ですら「果たして、顧客は面倒がらないか」という不安がよぎる。

裏返して言えば、その課題をうまく克服する知恵を編み出した銀行、証券会社が専用口座の獲得レースに有利なポジションを得られることはまちがいない。

浪川 攻 金融ジャーナリスト

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なみかわ おさむ / Osamu Namikawa

1955年、東京都生まれ。上智大学卒業後、電機メーカー勤務を経て記者となる。金融専門誌、証券業界紙を経験し、1987年、株式会社きんざいに入社。『週刊金融財政事情』編集部でデスクを務める。1996年に退社後、金融分野を中心に取材・執筆。月刊誌『Voice』の編集・記者、1998年に東洋経済新報社と記者契約を結び、2016年にフリー。著書に『金融自壊――歴史は繰り返すのか』『前川春雄『奴雁』の哲学』(東洋経済新報社)、『銀行員は生き残れるのか』(悟空出版)などがある。

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