明治二十一年六月三日 山崎光夫著

明治二十一年六月三日 山崎光夫著

タイトルは、ベルリンに集った医学留学生たちの記念写真の撮影日付。集合写真に納まった19名の左端に森鴎外がいる。彼ら鴎外と同時期にドイツに学んだ医学者の波乱に富んだ軌跡は、そのまま近代日本医学の歩みとも重なる。

日本近代医学の父とたたえられる若き北里柴三郎もその一人。斯学の先駆けとなった、公衆衛生の山根正次、法医学の片山國嘉、産科学の浜田玄達、眼科学の河本重次郎、小児科学の瀬川昌耆、解剖学の田口和美などがずらりとそろう。このほかジョン万次郎の息子(中浜東一郎)はじめ逸話に事欠かない人物が相次ぎ登場する。

今年は鴎外の生誕150年、没後90年に当たる。その期に合わせた出版だけに、記述は鴎外が中心になり、彼の『独逸日記』からの引用が頻繁だが、文豪の礼賛に終わらせず、上司やライバルとの確執、出世欲、脚気予防に見られる医学上の失敗にも触れ、人間・鴎外を彷彿とさせる。

講談社 2310円

  

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