お役所バッシングはやめられない 山本直治著 ~建設的批判を踏まえた新しい「公務員本」

お役所バッシングはやめられない 山本直治著 ~建設的批判を踏まえた新しい「公務員本」

評者 中野雅至 兵庫県立大学准教授

 本書は、従来の役所・公務員批判を適切に分析したうえで、それに代わる建設的批判の実現を提言するものであり、単なるバッシング論でも擁護論でもない、新しい「公務員本」である。

目につく点としては、「お役所バッシング」とは何かを定義して、精緻に分類しているところである。著者によると、お役所バッシングは(1)役所のなすべきミッションに対して向けられる批判、(2)公務員一般が持つ地位・待遇に対する批判、(3)個々の公務員の問題行動に対する批判の三つがあるという。

確かに、我々は普段「役所はけしからん」「これだから公務員は」と批判するが、冷静に分析してみると、この三つに集約されるのかもしれない。また、バッシングの目的にも三つあり、(1)怒りのはけ口、(2)関係者に責任をとらせる、(3)事態の解明と対策の推進だそうである。

評者が思わず納得したのは、「役所バッシングが政策を歪める」という指摘である。マスコミがわかっていながらしない指摘なだけに貴重だ。意外かもしれないが、日本の役所は世論やマスコミ、政治家の動きに敏感である。そのため、世論が過剰に反応すれば、その場しのぎでもいいから解決策を講じようとする。その結果、どうしても後先を考えない付け焼き刃の政策が出来上がってしまう。こんな冷静な指摘はマスコミこそすべきだろう。

ただし、建設的な批判本にありがちだが、さまざまな主張を斟酌して物事を冷静に考えようという姿勢が貫かれているだけに、主張に曖昧な部分も残る。何事にも白黒はっきりした結論を好む人にはそこが不満だろうが、いま必要なのはこうした二項対立を超えた議論の橋渡しだ。著者のいう「バッシングリテラシー」の醸成など当分先だろう。

やまもと・なおはる
人材紹介会社ロード・インターナショナルのシニアコンサルタント。1974年生まれ。中央大学法学部卒業、同大学大学院法学研究科修了(修士)。旧文部省(現文部科学省)、内閣官房副長官補室などを経て、国家公務員を退職。公務員向け転職支援情報サイト「公務員からの転職支援 役人廃業.com」を主宰。

PHP新書 777円 238ページ

  

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