サブウェイをいま手放す、サントリーの本音 ブームに陰り「野菜のサブウェイ」の再生は?

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だが、出店加速が裏目に出た。地方のショッピングセンターのフードコートなどの店舗で、一部苦戦を強いられたのだ。採算の取れない店舗が閉店に追い込まれていった。

追い打ちを掛けたのが、2013年末に発覚した、食品衛生法違反だ。2010年6月から2012年5月にかけて、ローストビーフに食品衛生法で認められていない結着剤を使っていたことが明らかになる。健康被害はなかったものの、”サントリー子会社の日本サブウェイ”と報じられたことで、親会社のイメージも傷つけてしまった。

そこで日本サブウェイは、伸び悩んでいた既存店対策に着手。新規出店を抑え、定番メニューのリニューアルに取り組んだ。2015年は期間限定商品がヒットしたこともあり、既存店売上高は前年並みと、停滞に歯止めがかかった。もっとも、2014年に477店まで増えた店舗数は、2015年12月末に448店と減少傾向にあり、店舗数純増による増収の寄与は少ない。店舗撤退なども響く。日本サブウェイは2014年12月期末時点で、利益剰余金が10億円超のマイナスとなっている。

”渡りに舟”だった?FC契約切れ

今回の売却は、FC契約がこの3月末に切れることをきっかけとして議題に上がったというが、サントリーにとっては”渡りに舟”だったかもしれない。ある外食業界関係者は「(サブウェイの本社は)これ以上ない売却相手。サントリーは日本サブウェイ株を売りたい意向はずっと持っていたのでは」と見る。ムーディーズ・ジャパンの柳瀬志樹シニアアナリストも「数億円のキャッシュインがあり、将来赤字が膨らむ場合の影響を緩和できるうえで、(サントリーにとって)ポジティブ」と評価する。

サントリーは今後も、日本サブウェイ株を35%保有し続ける。「店舗運営に支障をきたさないよう、新体制をサポートしていく」(サントリー広報)。人気の「えびアボカドサンドイッチ」や、チーズやバジルなど数種類のフレーバーでお馴染みの「オーブンポテト」など、日本独自メニューも継続される見通しだ。

ただし、サントリーから出向している及川直昭社長の後任には、サブウェイ本社から派遣された人物の就任が決まっている。徐々に経営の主導権が移っていくことは必至。「まずは日本市場への理解が先。グローバルで採用されている施策は、インパクトの大きい順から採り入れていく」(日本サブウェイ)。本社が行うグローバル施策と、サントリーが作り上げた日本式を、うまく折衷させることができるか。新生サブウェイの命運は、ひとえにそこにかかっている。

常盤 有未 東洋経済 記者

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ときわ ゆうみ / Yuumi Tokiwa

これまでに自動車タイヤ・部品、トラック、輸入車、楽器、スポーツ・アウトドア、コンビニ、外食、通販、美容家電業界を担当。

現在は『週刊東洋経済』編集部で特集の企画・編集を担当するとともに教育業界などを取材。週刊東洋経済臨時増刊『本当に強い大学』編集長。趣味はサッカー、ラーメン研究。休日はダンスフィットネス、フットサルにいそしむ。

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中山 一貴 東洋経済 記者

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なかやま かずき / Kazuki Nakayama

趣味はTwitter(@overk0823)。1991年生まれ。東京外国語大学中国語専攻卒。在学中に北京師範大学文学部へ留学。2015年、東洋経済新報社に入社。食品・小売り業界の担当記者や『会社四季報 業界地図』編集長、『週刊東洋経済』編集部、『会社四季報』編集部、「会社四季報オンライン」編集部、『米国会社四季報』編集長などを経て2023年10月から東洋経済編集部(マーケティング担当、編集者)。「財新・東洋経済スタジオ」スタッフを兼任。

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