教育委員会とは?

教育委員会とは、都道府県や政令指定都市、市町村内の学校教育や社会教育・文化・スポーツに関する方針を決めて、実際に管理・運営する組織です。

例えば、中学校・高等学校の設置・統廃合を決める、教職員を採用する、学校ごとに予算を配分するなどが挙げられます。そのほかにも、地域の公民館や図書館、文化会館、少年自然の家なども管理しています。

教育委員会は、知事や市長などの地方公共団体の長から独立した委員会という特徴があります。

教育委員会の種類

教育委員会は大きく2つの種類に分類できます。

1つ目は都道府県・政令指定都市の教育委員会です。都道府県と政令指定都市の教育委員会は教育方針の大枠や教職員の採用など、大きな権限を持っています。

2つ目は市町村、一部事務組合の教育委員会です。市町村と一部事務組合は都道府県が決めた教育方針に従って、より地域の特性に合った細かい施策を行います。

ちなみに一部事務組合とは、隣接する複数の市町村が共同で行政を行う機関です。主に小規模市町村が複数共同で一部事務組合を設けています。

都道府県

各都道府県には独自の教育委員会が設置され、都道府県立学校の管理が行われています。県立高等学校や県立中学校はもちろん、市町村が設置する公立小中学校も管轄します。

また教員免許状の発行や、小学校~高校・特別支援学校の教員採用や異動、教科書の選定など、都道府県の教育委員会が行います。

加えて、市町村の教育委員会への助言や指導、援助なども行っています。

政令指定都市

政令指定都市の教育委員会は、都道府県の教育委員会と同等の権限を持っています。例えば、教職員の採用や異動、教科書の選定など、都道府県の教育委員会ではなく、政令指定都市の教育委員会が独自で行っています。

例えば、堺市は大阪府にありますが、堺市の教職員は大阪府教育委員会ではなく、堺市教育委員会が採用しています。また教科書も大阪府ではなく、堺市の教育委員会が選定します。

違いを挙げるとすれば、教員免許状は都道府県の教育委員会が発行し、政令指定都市の教育委員会では発行しません。

このように実質的に都道府県と政令指定都市の教育委員会は、ほぼ同等の権限を持っています。

市町村

市町村の教育委員会は、都道府県の教育方針に従いながら、地域の特性に合わせた細かい施策を行います。例えば地区内の中学校や小学校の設置・統廃合や、当該地区の学校給食の実施などが挙げられます。

また地域の教育文化施設やスポーツ施設などの管理・運営も行います。

市町村教育委員会は教職員の採用や教科書の選定などは行っていないので、都道府県教育委員会よりは権限が小さくなります。

教育委員会の組織とは?

教育委員会は、1名の教育長と原則4名~5名(町村だと2名以上)の教育委員、事務局からなります。教育長と教育委員は、知事や市町村長などの首長が議会の同意を得て任命します。いずれも任期があり、教育長は3年、教育委員は4年です。任期終了後は再任されることもあります。

教育長や教育委員は教員経験者だけでなく、元教員でない一般の方が住民も任命される場合もあります。

下の図は文部科学省が公表している教育委員会の組織イメージ図です。

文部科学省「教育委員会制度について」を基に作成

教育委員会の下に事務局がありますが、事務局が教育委員会を実際に動かしていく組織です。

図のように、事務局の中では、総務課や学校教育課など複数の課に分かれており、それぞれの管轄で教育行政が行われています。

教育委員会の仕事内容

教育委員会の仕事は、例えば公立学校の設置・管理や学校施設の整備、学校給食の実施など教育全般に関わる仕事を行います。教育委員会は合議制を取り入れているので、定期的な話し合いがあり、決定した方針に基づいて、事務局が実際に執行します。

事務局職員は、県庁などの地方公務員と、教員などの教育公務員で構成されています。地方公務員はほかの部署からの転勤によって教育委員会で働きます。教育公務員の場合は、公立の教員だった人が教育委員会に転勤します。

教育委員会で働くには?

教育委員会に就職して働きたい場合には、自治体が求人として行っている採用試験に合格するか、教員として働いて教育委員会に転勤するかのどちらかになります。

気になる報酬ですが、基本的に地方公務員と教育公務員は勤務歴と年齢給になりますので、勤務歴と年齢が上がれば報酬も上がっていきます。

すべての自治体ではありませんが、教育公務員年収ランキングを紹介している記事がありますので、参考までにご紹介します。

関連記事:
東洋経済オンライン『「教育系」公務員年収1033自治体ランキング』

教育委員会の仕事

教育委員会の職務は学校教育や社会教育など、教育全般にわたります。

学校教育に関する職務は、例えば公立学校の設置や管理、教職員の人事や研修、教育課程、教科書の選定などです。

社会教育に関しては、例えば市民向け講座などの社会教育事業の実施や、図書館や公民館の設置・管理などがあります。

そのほかにも、地域の文化財保護、学校における体育に関すること、文化やスポーツに関することなども職務に入ります。

それぞれの役割

教育委員会の中で教育長、教育委員、事務局のそれぞれの役割は以下のとおりです。

教育長
教育長は教育委員会の会議全般を管理する教育委員会の代表です。会議の主宰や事務局の指揮・監督者など、教育委員会の最高責任者です。教育長は常勤で働きます。

教育委員
教育委員は教育長が主宰する会議に参加し審議を行います。また議事録を作成したり、教育委員会の活動報告書を作成したりします。教育長とは異なり非常勤で働きます。

事務局
事務局では教育委員会の会議で決定した方針の下に、実際に教育行政や事務処理を行います。例えば、教職員の採用・人事、給与や施設の管理、教員研修の実施、図書館などの文化施設の運営などです。

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困ったとき教育委員会に相談できるのか?

各教育委員会には相談窓口が設定されていて、教育に関わる相談ができます。

いじめや体罰、転校、不登校など、相談の種類によって、窓口がそれぞれ作られています。また生徒や保護者はもちろん、教職員でも相談できます。LINEを活用した相談窓口を開設している教育委員会もあり、相談しやすい環境づくりが進められています。

教職員の相談

社会の急速な変化により、教職員の環境も複雑化しています。そのため、仕事も多様化・複雑化し、仕事に悩む教職員も多くなってきました。

少しでも教職員の心と体の負担を軽減させるため、各教育委員会は、教職員対象の相談窓口を設置しています。

例えば、生徒指導や保護者対応の悩みや、同僚からのパワーハラスメント、仕事上の悩みなど、職務に関わる悩みを相談できます。

相談内容は秘密扱いとなっているため、安心です。

生徒の相談

教育委員会によっては、幼児~高校生専用の相談窓口を設置しています。

例えば、クラスの中で無視された、持ち物を隠されるなどのいじめに関するもの、不登校、奨学金、進路選択に関することなど、どんな相談でも受け付けています。それぞれ相談窓口が設置されていて、教育委員会によっては24時間体制で受け付けしているところもあります。

先生に相談しづらいことは教育委員会に直接相談するといいかもしれません。

相談時には名前を言う必要がないところもあり、秘密は厳守されるので安心です。

保護者の相談

就学や転入出、不登校、いじめ、学校の対応などのさまざまな相談に対応しています。

中立・公平な立場で相談に応じてもらえるので、こちらの相談をしっかりと聴いてもらえるでしょう。

個人のプライバシーに関わる相談内容の秘密は厳守されるので、安心して相談することができます。

教育委員会のHPなどで確認できること

教育委員会のHPで、どんな相談を受け付けているのかを確認することができます。

今後相談する機会に備えて、所属する地域を管轄する教育委員会のHPを確認しておきましょう。事前に相談できる種類を見ておくと安心です。

都道府県・政令指定都市教育委員会の一覧
文部科学省「都道府県教育委員会・政令指定都市教育委員会」

情報の確認

教育委員会で行われた審議会の内容や議事録が公表されているので、教育委員会がどんな議題について話し合いをしているのか知ることができます。会議を傍聴できる教育委員会もあるので、確認してみましょう。

そのほかにも公立高校の入試情報や高等学校卒業認定試験、教員採用試験に関する情報、教員免許状更新や発行に関する情報も確認できます。

予算や方針、政策、調査結果、教育・文化・スポーツなど広い範囲の情報についても得ることができます。

自分が住んでいる都道府県・政令指定都市を調べてみて、その後市町村の教育委員会も調べてみましょう。

手続き

各種手続きするための様式をHPで手に入れることができます。

都道府県、政令指定都市、市町村、一部事務組合によって書類・申請が異なります。

例えば都道府県の場合は、教員免許状の更新や交付、発行に関する書類はHPからダウンロードが可能ですが、政令指定都市や市町村、一部事務組合の教育委員会では掲載していません。

教育委員会の名義を借りたい場合の教育委員会後援名義使用に関する書類や、地域内施設使用の申請書類などは該当地域の教育委員会のHPに掲載しています。

手続きに手順についても問い合わせることができます。

Earth (アース)
私立高校現役教師
地方で働く現役高校教師。仕事に誇りを持ちつつ、明るく・楽しく教育に携わっていけるような新しい形の教師像を模索中。教員という職業をイメージアップさせる情報発信をしている。

(写真:Getty Images)