筆者が「それはミクロ的なアドバイスか、あるいはマクロ経済政策としての処方箋か」と確認するたび、相手に「めんどくさいやつだ」という顔をされた(正確には、されたような気がした。被害妄想かもしれない)。
しかし、このミクロとマクロの視点の峻別こそが、経済を全体感で捉えるために不可欠な作法なのである。
現在、議論の矛先は「円安」から「インフレ」へと移っている。物価上昇に対して実質賃金が追いつかない中、新たな資産防衛策として「ポートフォリオに株式を入れよう」という議論が盛んである。
インフレによる実質賃金の目減りを補填するため、インフレヘッジとして株式を持つという論理は広く受け入れられているように思われる。前述した円安リスクのヘッジと同様、これもミクロのアドバイスとして十分に正当化される。
しかし、マクロ経済への影響を考慮すると、やはり「合成の誤謬」のリスクが浮上する。
皆が「インフレヘッジ」で株を買えば、さらにインフレ
家計が株式へのエクスポージャーを増やす動きが広がれば、需給的に株価が押し上げられるだろう。そして、その家計にとっては株価の上昇によって一定の恩恵が期待できることは事実である。
だが、すでに膨大な株式を保有している資産家と比べれば、その恩恵は微々たるものだろう。結果的に、経済全体の格差を拡大させることになり、①自分が相対的に豊かになったと感じられない可能性が高い(金融資産の分布の偏りを考えると、相対的に豊かになる家計の方が少ない)という帰結になる。
さらに深刻なのは、株高の恩恵を最大化させた資産家が消費や実物投資を加速させることで、②インフレ率がさらに高まるリスクがあることである。



















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