経済的な余力はロシアがウクライナをはるかにしのいでいる。経済運営の統制を強めれば、ロシアはまだまだ戦争を持続することができる。徴税の余地も大きく、インフレの統制も可能だ。しかし、そうした手段を採れば、国民の生活水準は著しく低下する。たかがウクライナとの戦争でそこまで踏み込む必要があるのかという批判も出てくる。
ロシアがウクライナとの戦争を続けることができている最大の理由は、とりわけ都市部のロシア国民の生活がまだ豊かなことにある。開戦直後の物価高騰を除けば、都市部のロシア国民が感じる戦争の痛みはまだ限定的だ。とはいえ、戦争の長期化でロシアの都市部でも、さまざまな“ひずみ”が生じている。高インフレや相次ぐ増税は、その証左である。
ロシアの政治的な継戦能力は低下している
プーチン政権が回避したいのは、自らを支持する都市部の国民の生活の水準が劣化することだ。しかし戦争を継続すれば、それは免れない。この意味で、ロシアの政治的な継戦能力は低下している。
これに対して、ウクライナの政治的な継戦能力も低下している。ウォロディミル・ゼレンスキー大統領を取り巻く政治環境が内外で悪化しているためだ。
ウクライナ国内では、ゼレンスキー政権は国営原子力企業エネルゴアトムをめぐる巨額汚職事件に揺れている。そもそもウクライナは、汚職が蔓延している国として国際的に知られるところだ。アメリカの与党・共和党は、そうした国に対する支援の是非を問うている。汚職が蔓延した国に支援を行ったところで実りある成果はもたらされないというわけだ。
共和党とトランプ大統領は、ウクライナの問題はヨーロッパの責任だという姿勢である。そのヨーロッパも、雪だるま式に増えていく支援コストに頭を悩ませる。そもそも、これまで貸し付けたマネーのうち、ある程度は債権放棄に応じなければならないから、回収できる額は不明である。ウクライナの支援体制もまた大きく綻んでいるのである。




















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