パスワード付箋でペタッ、サイバー攻撃が急増する傍ら「脆弱だな!」のツッコミでセキュリティ界に新風《ゲームプログラマーが芸人になった》訳

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近年、ランサムウェア攻撃による甚大な被害や、AIを悪用した詐欺、翻訳精度の向上による巧妙な偽サイトなど、ネットの脅威は増すばかりだ。

とくにアスースンさんが衝撃を受けたのは、香港の金融会社で起きたディープフェイク詐欺事件。ビデオ会議に登場したCFO(最高財務責任者)がディープフェイク映像であり、それを見抜けなかった担当者は約37億円もの大金を送金してしまったというものだ。

こうした状況下で、企業や個人はどう対策すべきか。アスースンさんが提案するのは、技術的な防御策の導入と同時に、組織の「空気作り」を変えることだ。「脆弱なものを見たら面白いと思ってしまう」という彼ならではの視点で、セキュリティを真面目で堅苦しいものから、誰もが気軽に指摘できるものへと変えていきたいという。

「セキュリティに目を向けてもらうことが大事だと思っています。脆弱なことに対して、会社の中でも『脆弱だな』『脆弱じゃん』というツッコミが誰でもできて、笑いが起こるような雰囲気作りができればうれしいです」(アスースンさん)

お笑いで「脆弱だな!」と突っ込める社会へ

セキュリティインシデントの増加に伴い、アスースンさんへの注目度も高まっている。この1~2年で、取材や登壇の依頼は急増。福井県警主催のフォーラムで経営層や情報システム担当者向けにネタを披露したり、セキュリティ会社のウェビナー、学生主催の技術系イベント、果ては企業の忘年会まで、その活動の場は広がっている。

そんなアスースンさんが見据える今後の展望は、さらに大きなスケールでのエンターテインメント化だ。

「今後は番組制作に力を入れていきたいと思っています。自分がお笑いやテレビが好きなので、本当に面白いセキュリティ番組を作ることを目標に掲げています。目指しているのは、NHKの『魔改造の夜』や『笑わない数学』のような番組です。理系の人であれば誰が見ても面白いですよね。そのセキュリティ版を作るというのが理想です」(アスースンさん)

NHKやNetflixのような媒体での番組制作を最終目標に掲げつつ、まずは自身のYouTubeチャンネルでコンテンツを発信していく計画だ。最後に読者に一言セキュリティに関するアドバイスを伺ったところ、「身の回りのものに関しても『脆弱だな!』と突っ込めるようになっていきましょう」と語った。

アスースンさんの活動は、セキュリティの世界に新しい風を吹き込んでいる。堅苦しくなりがちな啓発を「笑い」という形で日常に溶け込ませることで、人々の意識を自然に変えていく。今後、彼が目指すNHKやNetflixといった大舞台で、セキュリティとエンタメの融合がどのような化学反応を生むのか、期待したい。

東洋経済Tech×サイバーセキュリティでは、サイバー攻撃、セキュリティーの最新動向、事業継続を可能にするために必要な情報をお届けしています。
柳谷 智宣 ITライター

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やなぎや とものり / Tomonori Yanagiya

1972年生まれ。1998年からITライターとして活動し、エンタープライズ向けのプロダクトをはじめAI、DX、サイバーセキュリティまで幅広い領域で執筆する。2018年から、NPO法人デジタルリテラシー向上機構(DLIS)を設立し、ネット詐欺の被害をなくすために活動している。

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