有料会員限定

TICADで脚光浴びたサブサハラアフリカ。金利上昇や援助縮小の試練を乗り越えられるか? シティグループ同地域統括に聞く「成長の原動力」

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

有料会員限定記事の印刷ページの表示は、有料会員登録が必要です。

はこちら

はこちら

縮小
シティグループ サブサハラアフリカ統括兼バンキング責任者のアキン・ダオドゥ氏。サブサハラ地域の前途に楽観的だ(撮影:尾形文繁)
2025年8月20日から22日にかけて、第9回アフリカ開発会議(TICAD9)が横浜市で開催された。TICAD9では石破茂首相が共同議長を務め、「インド洋・アフリカ経済圏イニシアティブ」の推進などの経済連携策が打ち出された。また、TIDAD9を機会に日本とアフリカの官民間で300を上回るビジネス関連の協力文書が締結されるなど、経済協力の機運が高まっている。
大手金融シティグループのサブサハラアフリカ統括兼バンキング責任者で、TICAD9でパネルディスカッションのスピーカーを務めたアキン・ダオドゥ氏に、サブサハラアフリカ経済の現状と展望についてインタビューした。

──コロナ禍やロシアによるウクライナ侵攻に端を発したインフレーション、さらにはアメリカ・トランプ政権による援助の大幅削減など、アフリカ経済は試練に見舞われてきました。サブサハラ(サハラ以南のアフリカ)経済の現状はどうでしょうか。

ご指摘のようなさまざまな課題に直面する中でも、サブサハラ地域の経済は比較的良好な状況にある。コロナ禍による公衆衛生上の課題については、多くの人が予想した以上にうまく乗り越えることができた。その1つには、この地域では若者が多く、平均年齢が低いことが、課題克服に寄与したのではないかと言われている。

他方で試練もある。コロナ禍やウクライナ侵攻をきっかけとして、国際的な資本市場へのアクセスがかなり制限されてしまった。鉱物資源など1次産品に依存する国も多く、ダメージも受けた。西側諸国の中央銀行がインフレーションに対処するために流動性を引き締めた結果、借り入れコストが大幅に上昇し、経済に大きな影響が生じた。

とはいえ、ナイジェリアや南アフリカ共和国といったサブサハラ地域の大国では、現在進められている経済改革がきちんと実行されれば、そうした国々の成長率を押し上げ、さらにはサブサハラ地域全体の経済の活性化にもつながると思う。こうしたことから、私はこの地域の経済について、ポジティブな見通しを持っている。

アメリカの支援縮小の影響は?

──サブサハラ地域では公的債務の削減が大きな課題になっています。解決の道筋は描けているのでしょうか。

世界的なインフレは金利上昇の形でサブサハラ地域に大きな影響を与えた。これは、西アフリカのガーナのデフォルト(債務不履行)のきっかけになった。それ以前に南部アフリカのザンビアもデフォルトした。

ただ、両国とも国際的な支援の下で債務の再編が実施され、経済も回復してきている。利払いコストの上昇への対応は大きな課題ではあるが、多くの国で債務マネジメントが整備されてきている。

──もう一つの試練がアメリカの政策変更です。今年4月にトランプ政権が打ち出した相互関税の導入は、サブサハラ諸国にも衝撃を与えました。トランプ政権は国際的な援助機関である国際開発庁(USAID)を解体してその機能を国務省に編入するとともに、対外援助自体を大幅に削減しました。さらに、アフリカに関しては「アフリカ成長機会法」(AGOA)の失効が9月末に迫っています。

関税問題は、世界経済にとって非常にネガティブな影響を与えるものだ。ひいてはサブサハラ地域の経済にも影響する。ただ、サブサハラ地域の国々は工業化が遅れている。南部アフリカのレソトなどの一部の国を除けば、工業品のアメリカ輸出依存度は高くない。1次産品の場合には国際的に価格が決まるため、アメリカ以外にも多くの売り先がある。AGOAについても同様で、確かに多くの国が利益を得ているものの、大きなインパクトが及ぶ国はさほど多くはない。

USAIDの解体については公衆衛生や食料安全保障などに関連する分野では影響がある。援助に関するアメリカの縮小分をどうカバーするかについて各国政府は考えなければならないが、サブサハラ地域の諸国はそうした困難を克服できる力を持っている。

次ページ危機を乗り切るレジリエンスとは?
関連記事
トピックボードAD