駿台予備校「大学合格者数の掲載やめる」裏で新たな商機、絶対に東大!は過去のものに 学校・自治体から予備校や学習塾に増える依頼

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そのほかにも駿台予備校では、さまざまなICTコンテンツを導入している。それらを駆使して改善しながら指導のノウハウを重ねることで、生徒の生徒の苦手部分を克服させ、学力向上につなげているという。

例えば、東大入試でも、物理だけ点数が取れないために合格できなかったいうケースはある。その生徒に対してもほかの生徒と同じような授業をしていても力はつかないが、弱点を明らかにし、そこを補強する授業を集中的に行うことで合格に近づけさせることができる。英語力強化のためのコンテンツもあれば、大学受験指導のコンテンツもある。そうした独自に開発したメソッドが、これからの駿台予備校にとっては大きな強みになる。

しかも、このメソッドを駿台予備校は、ほかの予備校・学習塾に広める試みも今年から始めている。簡単に言えば、合格させるメソッドとノウハウの販売である。独占しておけば、ほかの予備校・学習塾との差別化につながり、多くの生徒を集める武器になるはずだ。

にもかかわらず、それを駿台予備校は売ることを決めた。生徒を集めて合格させる事業には限界があるが、メソッドとノウハウを売る事業は、受験がありつづける限り、大きく発展させていく可能性がある。

広める先は、予備校・学習塾ばかりではない。私立や公立の学校にも広めようとしており、すでに導入しているところもある。

「かつては、自治体が予備校や学習塾に相談するなんてことはありませんでした、大きく変わりましたね。教員の研修をどうすればいいかなど、そうした相談が駿台予備校にもけっこうあります」

学校にとっても進学、受験がますます大きな目標になっているからである。だから、学校や自治体も予備校や学習塾のノウハウやメソッドを利用せざるをえず、積極的に取り入れる動きが強まっている。予備校や学習塾の合格させるノウハウやメソッドを、学校も自治体も求めているのだ。それは、駿台予備校が狙うマーケットが確実に大きくなってきていることを示している。

前出の拙著『学校が学習塾にのみこまれる日』の中で筆者は、「なにしろ『テストでよい成績をとる』ことに関しては、これまで述べてきたように、学習塾のほうが学校より優れているからだ」、学校が学力偏重になればなるほど「学習塾があれば学校はいらない、なんてことになりかねない」と述べた。

学校や自治体からの相談が「駿台予備校にもけっこうある」と山畔氏がいうように、予備校・学習塾に頼る傾向が強まっている現在、「のみこまれる日」はますます近づいているのかもしれない。というより、すでにのみこまれているのかもしれない。

(注記のない写真:駿台予備校ホームページより)

執筆:フリージャーナリスト 前屋毅
東洋経済education × ICT編集部

前屋 毅 フリージャーナリスト

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まえや つよし / Tsuyoshi Maeya

1954年、鹿児島県生まれ。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。著書に『学校が合わない子どもたち』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』(朝日新聞社)、『ほんとうの教育をとりもどす 生きる力をはぐくむ授業への挑戦』(共栄書房)、『ブラック化する学校 少子化なのに、なぜ先生は忙しくなったのか?』(青春出版社)、『教師をやめる 14人の語りから見える学校のリアル』(学事出版)など。

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