駿台予備校「大学合格者数の掲載やめる」裏で新たな商機、絶対に東大!は過去のものに 学校・自治体から予備校や学習塾に増える依頼
東大が発表している2025年度合格者出身校の地域別割合によると、一般選抜に限ると東京が35.8%、東京を除く関東が25.9%と、関東だけで61.7%を占めている。志願者でも、61.6%が関東出身者である。
「何がなんでも東大、という時代もありましたが、今は変わってきています。例えば、北海道にも駿台予備校の校舎はありますが、東大志望者もいるにはいますが、かなり少なく、北海道大学志願者が圧倒的に多いのが現実です」と、山畔氏。
関東だけが東大受験対策に優れているというわけではなくて、そもそも関東以外から東大に進学したい志願者そのものが減ってきているのだ。同じような傾向は、京都大学でも大阪大学でも強まっている。
そして、国立に合格できる力があっても私立を選択する受験生も少なくない。何が何でも東大でなくなってきたように、「成績がよければ国立」でもなくなってきている。多様化がすすんできている。
そうした中で東大をはじめとする従来の難関大学の合格者数を強調して競ってみたところで、かつてのようなインパクトはなくなっており、効果的な広告にもならなくなってきている。だから、駿台予備校は合格者数の掲載を終了するのだ。
ただし、終了するのは駿台予備校全体の合格者数でしかない。校舎別での合格者数は掲載・公表を続ける。北海道の札幌校舎であれば、北海道大学志望者が多いので北海道大学の合格者数を発表することは効果的な広告になる。九州の福岡校であれば、志望者の多い九州大学の合格者数は発表することに意味はある。校舎ごとに地域の特色に合わせた発表は続けるわけだ。「合格者数の掲載終了」は、「より効率的な広告の強化」と解釈したほうがよさそうだ。
それだけで、効率的で効果的な広告になるわけではない。大学受験をめぐる状況の変化は、地域の違いだけではない。急速に強まっているのが、現役志向である。「何がなんでも東大」の時代には、現役で失敗すれば浪人生となって再チャレンジするのも普通で、「二浪三浪は当たり前」などといわれたりもしていた。
それが通用しない時代になっている。代々木ゼミナールが公開しているデータによると、東大でも1996年度の合格者に占める現役率は65.4%だったが、2025年度は74.5%へと過去最高を記録している。だからこそ、前述したように浪人生を主たる対象にしてきた予備校も現役生を多く受け入れるようになり、予備校と学習塾の境目がなくなってきている。
私立や公立の学校にメソッドとノウハウを売る
志願校の多様化が進み、現役志向が高まっている中で、予備校・学習塾は特定難関大学の合格者数ではなく、ほかの面でアピールしなくてはならなくなっている。それは、やはり「合格させる力」でしかない。そのために駿台予備校が打ち出してきているのが、「究極の個別最適学習」だ。次のように山畔氏は説明する。
「ある問題を解かせてみて、その生徒が何を理解していないかをAIが分析して教えてくれるシステムを駿台予備校では開発しています。そこでわかった弱点を補強してあげれば、確実に成績は伸びます。ちょっと乱暴な言い方かもしれませんが、苦手な分野でも駿台予備校なら2カ月で克服させることができます」
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