「無在庫経営」が早期の供給再開に役立った--いわき市の工場群が被災したクリナップ、生産本部長が語る震災の教訓

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

--岡山工場の生産能力はどの程度か。

完成品ベースでいえば、従来、いわき7に対し岡山が3の比率だが、クリンレディについては同数のプレス設備を入れて5:5にしようと考えている。全体の比率も、現状は6.5:3.5くらいになっており、今年秋には東西の配送エリアの見直しなどを行って、6:4くらいにはしたいと考える。

ただ、いわきには、ステンレス鋼板の切断から完成品生産までの一貫体制ができているが、岡山ではシステムキッチンに欠かせない長尺のステンレス製カウンタートップの生産ラインがない。その部分をいわきで一極生産しているためだが、それがネックとなり、今回の震災では被災しなかった岡山工場の生産ラインも1カ月止まってしまった。

今後は、どちらかが止まってももう1カ所で生産が続けられるよう、岡山でも一貫生産の体制を作る準備を進めている。来年中にはそれができると思う。


資材納入管理板


--復旧過程で、震災前からの取り組みで役に立ったことは何か。また、一貫生産体制の複線化のほかに改善すべき点は。

在庫を持たない生産システムが、結果として被害を最小化する結果につながったと思う。当社は(過剰在庫を抱えて赤字に陥った経験から)26~27年前にトヨタ式のカンバン方式を取り入れており、受注から最短6日間で納品する体制を構築している。原材料に近いところのストックはある程度持っているが、完成品での在庫はない。在庫があったら逆に被害は大きかったのではないか。



逆時計


 また、当社の扱う商品は同じものを大量に作るのではなく、オプション仕様もさまざまで、多品種少量型の生産ラインだ。そのため、機械設備も規格品ではなく、自社ノウハウを基にした独自仕様になっている。大型プレス機などの補修についてはさすがに業者に任せるしかないが、ライン周りの小さい設備については、自前で修理して能力を高める習慣ができていた。そのことが今回の復旧過程でも大いに役に立った。

一方、課題としては、人の問題だろう。イレギュラーな問題が起きたときに、現場で即決即断できる人材が足りない。トップの指示待ちで、指示が出るまで動けない、といった問題が散見された。今後は、少なくとも、自分の担当分野については、リスクをよくわかっている人がその場で判断できるような仕組みを作る必要がある。

そうした問題意識から、いわき生産本部では、技術教育課という組織を作った。班長、ライン長、製造課長、工場長とそれぞれの階層ごとの役割分担を明確にし、できるだけ現場の人間が自分で判断して動けるよう、意識改革を進めたい。知識は1対10で教えることができるが、意識は1対1でないと伝わらないところがあり、マンツーマンでしか対応できない部分もあるが、私が会社を去ったあとにも引き継がれるような教育の仕組みを作りたい。


湯本工場のクラフトマンライン

(勝木奈美子 =東洋経済オンライン)

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事