対中・対アメリカの「デリスキング」が背中を押した! EU(欧州連合)がインドと急接近している

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貿易統計を確認すると、インドの対EU貿易総額は2024年時点で1260億ドルと、中国(1420億ドル)に次ぐ規模であり、それにアメリカ(1180億ドル)が肉薄している。

FTA締結を起爆剤にEUとインドは一段と貿易を増やしたいところだが、非関税障壁の問題で改善がみられなければ、双方の貿易は期待ほど増えないのではないだろうか。

日本に求められるインド政策とは

翻って、日本とインドの関係を考えてみたい。すでに両国の間では、2011年8月に包括的経済連携協定(CEPA)が発効しており、貿易と投資の円滑化が図られて久しい。とはいえ、両国間の貿易と投資の拡大は必ずしも順調とは言えないのが現状である。特に投資に関しては、インドの投資環境の整備が依然として遅れている点がネックである。

繰り返しとなるが、インドは元来、強い国産品志向を持つが、近年はモディ政権の下で、それがさらに強まっている。こうしたインドの姿勢に鑑みれば、日系企業には、合弁企業の設立や地場のサプライヤー企業との取引を通じて、インド経済の成熟を促すくらいの覚悟が求められる。少なくともインドは、短期で収益を得られる市場ではないだろう。

日本政府としても、インドに対して、中長期的な観点から粘り強い働きかけが求められる。例えばインドは、国際合意に基づいた日本へのレアアースの輸出に制限をかけようとしていると報じられている。中国によるレアアース規制への対応を理由にするものだが、仮に実行されれば日印関係に大きなヒビが入りかねない事案となる。

残念ながら、かつてほどの経済力を持たない日本に対して、インドはそれほど期待を寄せていないと見受けられる。とはいえ、通商関係は高い透明性を持って行われなければならないし、契約は履行されなければ意味を持たない。短期的な思惑に惑わされず、中長期的な観点から、日本はインドに対して譲れない一線を設定し、それを守るべきだろう。

土田 陽介 三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部副主任研究員

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つちだ ようすけ / Yosuke Tsuchida

2005年一橋大経卒、06年同修士課程修了。13年同博士課程単位取得退学。株式会社浜銀総合研究所を経て現職。 欧州を中心にロシア、トルコ、新興国のマクロ経済、経済政策、政治情勢などについて調査・研究を行う。主要経済誌への寄稿、学会誌への査読付き論文多数。著書は『基軸通貨‐ドルと円のゆくえを問いなおす』(筑摩選書)『ドル化とは何か‐日本で米ドルが使われる日』(ちくま新書)『脱炭素・脱ロシア時代のEV戦略 EU・中欧・ロシアの現場から』(分担執筆、文眞堂)。 関東学院大学経済学部非常勤講師。

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