"AIを活用した教育"の第一人者・安藤昇氏が「小学校段階からAIを使わせてはダメ」と言い切る訳 「好奇心や創造力」を育み「倫理や道徳」に重点を
「優れたAIサービスがたくさん出てきていることもあり、今の大学生はみんなAIを使っています。レポートなどの課題にも当然使っていると考えたほうがいいでしょう。青学でも親が率先的にAIに課金して子どもに与えている家庭も見られ、AIの利用は多くの中高生にも浸透していると思います。これだけ利用が広がっている中で、禁止しても意味がありません。むしろAI活用を前提にして、人間には何ができるのかという視点で教育を考えたほうがよいのではないでしょうか」
最近では、複数のAIが協力し合ってタスクを実行してくれるAIマルチエージェントなども注目されている。そんな時代においては「AIができることは、もう人間がやらなくてもよいとさえ思っています」と、安藤氏。では、人間にしかできないこととは何か。
「例えばプロジェクトを立ち上げたときに、泥臭いコミュニケーションや、人をまとめるといったことは人間にしかできません。そうした本来人間がやるべきことと向き合っていくことが大切だと思います。また、AIは善悪を判断できませんので、人の心を育てることが重要になると考えています。学校の役割は、子どもたちにいかに好奇心を持たせるのか、そこに重点が移っていくでしょう。将来的には教え方のうまい教員もいらなくなるかもしれません。子どもたちの好奇心を育み、倫理や哲学、道徳などをしっかり教え、人間として正しい方向に進めるよう導くことが重要になっていくのではないでしょうか。人間は人間にしか育てられないと考えています」
実際、安藤氏は授業の中で倫理教育も行っている。すでに昨今、AIを悪用した犯罪が増えているが、AIがどれだけ危険かということについて具体的な事例とともに認識させるようにしているという。
「例えば、韓国で実際に起きたディープフェイク被害は、どんなソフトを使って行われたのかというところも具体的に示しました。AIは何でもできるからこそ、何をやってはいけないのかを判断することが重要であると伝えています」

(写真:安藤氏がAIで作成した資料より)
小学校段階からのAI活用に懸念、「好奇心や遊び心」を育んで
AI活用に積極的な安藤氏だが、早期からのAI活用には懸念を示す。現在、次期学習指導要領の検討が進んでおり、生成AIの活用を含む情報活用能力の育成について強化する方針が示されているが、学校でのAI活用はどのような点に注意すればよいのだろうか。
「私はほとんどのAIサービスに課金して活用していますが、AIの進化はすさまじい。今後はノーベル賞級の発見もAIがするようになるでしょう。AIが社会の中核を担う時代には、働くという概念そのものが変容し、純粋な知的好奇心、創造的な遊び心、情熱を注げる対象に没頭する力こそが、職業人生においても個人の人生においても、充実感と生きがいを支える根幹になるのではないかと考えています」