証券口座「乗っ取り」の全貌と犯罪阻止への一手、犯行グループが株売却に使っている口座の特定を急げ
それぞれの犯行グループがAIなどのテクノロジーやSNSなどを活用しているほか、金融業の知見も持ち合わせている。近年、金融犯罪被害が急増しているのは、こうした分業体制の下で相当な人数が関与しているためだと思われる。
もう1つの手段が、SNSなどを通じて口座を不正に買い取るルートだ。SNSに書き込まれている「買い取り募集」の多くは銀行口座だが、信用金庫・信用組合の口座や証券口座、暗号資産アカウント、クレジットカードなどの書き込みも多数存在する。
そのため転売目的で銀行口座と証券口座を同時に作り、犯行グループに高額の値段で譲り渡す顧客も一定数いるものと思われる。
売り用口座の「特定」が急務
今般の証券口座の「乗っ取り」は、犯行グループが株価操縦によって利益を不正に得るために行われている。この金融犯罪を防止するために取り組むべき施策は、利益を得るために犯行グループが使っている売り用口座の特定・共有である。まずは売り用口座を特定し、犯行グループに活用させないことが何より重要だ。
犯行グループが不正に取得した利益を換金する際には、売り用口座から銀行口座への出金が必要になるので、売り用口座を特定すれば、この流れを食い止めることもできる。
また、売り用口座を早期に特定して、そこにある資産を凍結することができれば、買い用口座として乗っ取り被害に遭った利用者への補償に充当する道も開けると考えられる。
犯行グループが売り用や買い用として利用している不正口座は、各証券会社が確認・特定する必要がある。だが、売り用口座と買い用口座はそれぞれ異なる証券会社の口座が利用されているため、個社だけで不正口座を特定することが難しい。このことが各社で調査が進まない原因でもある。
今後は、株価操縦の疑いのある株価変動があった際に、東京証券取引所などが売り用と買い用の口座の情報を業界内や当局に開示するなど、調査・捜査が早急に行われるような情報開示が必要だろう。
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