半導体エンジニアが半導体工場の建て方を超解説 TSMCもアメリカつまづいた工場建設の難しさ

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最重要なミッションは製造装置の選定である。オランダのASML社が製造するEUV露光装置のような唯一無二の製品以外では、ひとつの工程で使用する装置でも複数のメーカーが選択肢にあがる。

実績やサンプルを用いたデモ評価などを行い製造装置の選定を進めることになる。過去には技術部門がさまざまな評価を行って選定した製造装置を、購買部門が土壇場でひっくり返したため、プロセス開発に遅れを取ったケースもあったと聞く。製造装置の選定はきわめて重要だ。

フェスティナ・レンテ社は会社としてのこれまでの経験値がないため、この重要な製造装置の選定は机上で行う必要がある。様々なツテで情報収集と判断を下し、製造装置の発注作業を進めなければならない。

TSMCがアメリカでも苦戦した装置の配線

ここまでで苦労は多々あったが、実績のあるゼネコンの指導力と地元自治体の強力なサポートにより、フェスティナ・レンテ社の半導体工場建設は順調に進んだ。クリーンルームも稼働し始め、製造装置の受け入れ態勢も整ってきた。

この段階までくるとゼネコンなどの建築系作業者以外に製造装置メーカー側の多くの作業者が工場内に入構することになる。そのためすべての入構者に対して、安全教育およびクリーンルーム教育を実施し、指紋認証や顔認証などのセキュリティー登録を行う。これらの教育は様々な国籍を考慮し英語でも実施される。

いよいよ半導体製造装置を搬入する際には、事前にどのような用力・配線・配管が必要でどこに接続するかを提出する必要がある。表1に架空の製造装置の用力表例を添付する。製造装置によっては30を超える接続を持つものある。

半導体工場の製造装置の用力表

フェスティナ・レンテ社は200台を超える製造装置のすべてについて、これらの資料に基づきゼネコンやサブコンに対し、各製造装置までの配線・配管を製造装置の搬入予定に合わせて準備させければならない。TSMCのアリゾナ工場の遅延は工場建設の遅延ではなく、これらの各種用力の接続準備や接続作業の混乱が原因だと聞いている。

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