トランプ関税の脅威、対中で「第三国経由」封じも 「保護主義の関税」と「威嚇のための関税」がある

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トランプ関税で重要となるのがワシントンや米業界内でのインテリジェンス(情報収集)だ。

関税発動の噂などは業界内で知り合いを通じ事前に察知することもある。各社は関税発動の場合の経済的影響を分析するなど入念な事前準備をしている。一部企業は第三国などへの調達先変更やアメリカ国内産への切り替えといったシナリオを準備している。

そして、一部は政府へのアプローチ体制も準備している。特定品目で政府に対し除外を求める安全保障上の理由なども検討し、効果的な説得方法を用意しているところもある。

トランプ関税のうち、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく関税やその他の一部は、早期に実行可能なものもあるため、このような事前準備がゲームチェンジャーとなりうる。

中国産品は第三国経由のものもブロックする可能性

なお、前述の通り第三国に生産拠点を移すことを実施、あるいは検討する企業も多数あるであろう。だが近年、ワシントンでは超党派でメキシコやベトナムなど第三国経由でアメリカに流入する中国産品への懸念が強まっている。

トランプ2.0に政権入りする通商幹部は、第三国経由の中国産品の取り締まる新たな強化策導入を狙っている。

例えば、原産国が第三国となっていても中国産品比率がある数値を超えた場合は1974年通商法301条関税を適用したりするといった案など、これまでの政策の常識を覆す、新たな手法が導入されることもありうる。

また、北米貿易協定(USMCA)のメキシコ・カナダで生産していても、親会社が中国企業であれば関税を適用するといった対策が導入されるかもしれない。

全米経済研究所の分析では、1.0で課した対中関税は雇用にはややマイナス影響があったものの、共和党の票拡大につながって政治的にはプラスであったとの調査結果を発表している。トランプはこれを直感で理解しているようだ。

今日、企業や業界団体は迫るトランプ関税に抵抗する準備を進めている。日本企業も必要に応じて、早期に同じく被害を受ける他の企業や業界団体、各国政府などとの連携も模索することが望ましいであろう。

渡辺 亮司 米州住友商事会社ワシントン事務所 調査部長

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わたなべ りょうじ / Ryoji Watanabe

慶応義塾大学(総合政策学部)卒業。ハーバード大学ケネディ行政大学院(行政学修士)修了。同大学院卒業時にLucius N. Littauerフェロー賞受賞。松下電器産業(現パナソニック)CIS中近東アフリカ本部、日本貿易振興機構(JETRO)海外調査部、政治リスク調査会社ユーラシア・グループを経て、2013年より米州住友商事会社。2020年より同社ワシントン事務所調査部長。研究・専門分野はアメリカおよび中南米諸国の政治経済情勢、通商政策など。産業動向も調査。著書に『米国通商政策リスクと対米投資・貿易』(共著、文眞堂)。

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