不動産の世界で勝者と敗者がはっきりするのと同じく、トランプ氏はゼロサムの世界観を持っていると聞いたことがある。アメリカの政権は1990年代以降、貿易は各国にとって「ウィン・ウィン」で恩恵をもたらすと捉えてきたが、トランプ氏はこの考えを1.0で破棄した。
なお、トランプ氏は、他国との貿易収支を2国間関係の公平性の物差しとしている。
トランプ1.0時代の商務省の幹部から聞いた話では、当時のロス商務長官をはじめ省内の幹部会合では毎回、最初の議題は貿易赤字ランキングの確認であったという。米通商代表部(USTR)でも同様に、トップダウンで貿易赤字対策が重視されていた話を、USTR職員からも聞いた。
したがってアメリカの貿易赤字トップの中国とメキシコに、トランプ政権は特に焦点を当てるであろう。
2023年の貿易赤字ランキングで日本は2023年に5位にランクイン。2024年(公表済みの11月までの統計)は7位だ。
上位にある日本は、トランプ政権の標的に入るリスクをはらんでいる。
関税への抵抗勢力は第2次政権に不在
トランプ1.0では、関税をめぐり激しい内部抗争が繰り広げられ、時にメディアでも報じられた。
スティーブン・ムニューシン財務長官、ゲーリー・コーン国家経済会議(NEC)委員長、ソニー・パーデュー農務長官など自由貿易推進派が、保護主義派のピーター・ナバロ大統領補佐官・ホワイトハウス通商製造業政策局長、ロバート・ライトハイザーUSTR代表などによる関税政策導入に強く抵抗した。
だが、2.0ではムニューシン氏やコーン氏のように市場を代弁して関税に強く抵抗する人物は不在だ。2.0でトランプ氏が指名したスコット・ベッセント財務長官候補、ケビン・ハセットNEC委員長候補などは市場寄りであるものの、抵抗勢力とならないとの見方が支配的だ。
トランプ2.0で、1.0にはなかった最大の公約の1つが、インフレ抑制だ。一部の民主党支持者をはじめ関税反対派は、関税をインフレ押し上げ要因と主張している。
だが、トランプ氏は1.0でインフレ問題が起きなかったことからも、そのリスクを気にしていない。なお、ピーターソン国際経済研究所の調査によると、1.0の1974年通商法301条に基づく対中追加関税は、アメリカのインフレ率を0.26%押し上げたにすぎない。
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