「子どもを甘やかさない」、希学園関西が規模を拡大しない背景に持つこだわり 中学受験はあくまで「チャレンジの1つ」である
「学習内容については、私たちに任せてほしいと考えています。失礼ながら指導において保護者の方々は素人です。子どもはどうしても、親には甘えたくなりますし、親もつい過度な手助けをしたくなる。結果、子どもから自分の頭で考える機会を奪いかねないのです。中途半端に教えたり関わったりすると、むしろ逆効果になることもあります」
例えば、親はすでに「数学」を知っているため、算数の問題でも無意識に方程式や公式を使いがちだ。「こう解くと効率がいいよ」と教えてしまうこともあるだろう。しかし、XやYを用いた思考は抽象度が高く、小学生が使いこなすには時間がかかるうえ、かえって混乱を招いて理解が遅れる可能性もある。
一方で、送迎や健康管理など生活面のサポートには親の力が必要だ。希学園では面談のほか、保護者と担当チューターがネット上の個別掲示板でもコミュニケーションを取っており、相談はもちろん、お互い子どもに関して情報交換を行い、塾と家庭で指導の役割分担をするなど、こちらも濃い関係性を築いている。
中学受験は「数ある挑戦の1つ」である
中学受験は、教育虐待や経済格差を描くドラマのテーマにされるなど、マイナス面が取り上げられることも多い。黒田氏は、そうした弊害を引き起こす原因は大人にあると語る。
「子どもは、10歳ごろから思考力が発達していきます。そのタイミングで『頭を使う』『少し背伸びしてチャレンジする』など、頑張る経験をすることで、子どもの視野は広がっていくのです。子どものキャパシティや枠を広げるチャレンジの選択肢の1つに、中学受験がある。スポーツが得意な子はスポーツでも、絵が得意な子なら絵でもいいんです。『これがやりたい!』がまだない子でもチャレンジできるのが中学受験であり、数ある挑戦の1つとして捉えることが、中学受験を意義あるものにする価値観だと考えています」
最近では、効率重視で「ノウハウ」を求める保護者も多い。あふれかえる情報に振り回されてしまっている親もいるはずだ。「中学受験に合格しさえすれば人生は安泰。逆に、ここでダメならもう終わり」――、そんなふうに捉えてしまってはいないだろうか。中学受験を終えた後も、子どもの人生は続いていく。親の手を離れてからも、失敗したり、厳しい波にもまれたりすることがあるはずだ。そのとき、折れずにチャレンジし続けられるかどうか。その力を育てるのが、本来の「教育」に課せられた使命なのかもしれない。
(文:藤堂真衣、写真はすべて希学園提供)
東洋経済education × ICT編集部
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