「子どもを甘やかさない」、希学園関西が規模を拡大しない背景に持つこだわり 中学受験はあくまで「チャレンジの1つ」である
成長段階の子どもたちはまだ視野が狭く、目先の利益を優先したり自分中心で考えてしまったりしがちだ。しかし黒田氏は、その視野を広げて人間的な成長を果たすことが、中学受験や通塾をする意味にもなると語る。希学園では「あらゆる面において子どもを甘やかさないように」しているのだそうだ。
「挨拶は徹底しています。挨拶をしなかった子は追いかけていって声をかけます。また、講師・受付スタッフは原則、子どもがきちんと言葉で伝えてくれない限り対応しません。例えば、『鉛筆忘れた』という子には『だから?』と返します。子どもが事務室に来て、『鉛筆を忘れたので貸してください』と言ってはじめて対応するのです。昔は各教室に貸し出しボックスがありましたが、甘やかしだなと思い撤去しました。
親子であれば単語でも会話が成り立つし、親が先回りすることもあるでしょう。そこをあえて、『どうしたいの?』と問いかけることが必要です。子どもが成長するにはいろいろな人が関わります。親離れが始まる時期に、そうした周りの人たちを大事にしてほしくて、他者との関わりを大切に考えられるように育てています」
子どもたちが主体的に勉強に取り組めるよう、講師のポジティブな声掛けはもちろん、ハチマキを締めての勉強合宿、学年ごとの集会、動画でのメッセージ配信など、モチベーションを高める仕掛けも多い。

一方で、子どもたちとの “濃い”関わりをどう維持するかは課題だ。現在、関西は9教室、約3200人(うち6年生が約700人)が通っている。生徒数が増える中で、黒田氏は今後の教室展開はしないつもりだと語る。現在の指導スタイルを継続するには、講師の採用・育成にも労力がかかる。それもあって、現在の規模が最大限のようだ。
親が中途半端に「算数」を教えてはいけない理由
2024年春時点で、関西(近畿圏)の中学受験率は約10%ほどだった。首都圏の約20%と比べると低く感じるかもしれないが、首都圏同様、関西でも受験率は上昇を続けている。
「関西の中学受験の特徴は、灘中学校をはじめとする伝統校のブランド力の強さです。再編などで新たに頑張っている学校もありますが、やはり伝統校の志望者は多いです」
各校の入試問題にも、灘中学校の影響を受けた構成が見られると言う。
「関西は以前から理系重視と言われてきました。現在は文系重視やバランス型の学校も出ており、以前に比べれば『算数で勝負が決まる』という感覚は弱まりましたが、それでも理系重視の傾向は続いています。特に難関校は、灘や甲陽学院の3科入試型に引っ張られる形で、理系科目のレベルが高めに設定される印象です」
こうした傾向を踏まえ、塾では教科書に準拠しないオリジナル教材とカリキュラムで授業を行うわけだが、親はどうしても、子どもの現在地や成績が気になるもの。塾と保護者の関わりについて尋ねると、黒田氏ははっきり「学習面は任せてほしい」と答えた。