村瀬エネ庁長官「再エネか原発か」の議論は終焉 脱炭素化通じ、エネルギー自給率向上に全力

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――現在、策定に向けて審議が進められている第7次エネルギー基本計画では、2040年を見据えた新たな施策が注目されています。今後の電源構成で柱となる再エネ導入の加速に向けてどのように舵取りをしていきますか。

再エネについては地域での景観問題などが指摘されており、地元住民の理解を得て進めることが非常に重要だ。政府としても事業者の取り組みを指導・サポートしていきたい。また、環境省を含めた関係省庁とも連携し、公共施設や工場、倉庫など建築物の屋根上に太陽光発電設備を導入していくための支援も進めていく。洋上風力発電については、再エネ海域利用法に基づき着実に案件を形成していく。

また、次世代技術については、グリーンイノベーション基金を通じて、ペロブスカイト太陽電池や、浮体式洋上風力発電など次世代技術の早期実現に向けてしっかり取り組む。ペロブスカイト太陽電池は軽量で曲げることができるため、設置可能な場所が大きく広がる。浮体式洋上風力発電の実現に向けて、「EEZ法案」(再エネ海域利用法改正法案)の国会での早期可決を目指している。また、2040年に向けて、原子力発電も最大限推進していく。

各国ともS+3Eの政策軸は変わらず

――アメリカやヨーロッパの状況をどう見ていますか。

アメリカではトランプ政権になればパリ協定を脱退するだろうという見方もあるし、実際そうなるのかもしれない。EV(電気自動車)政策についても現政権とはずいぶん違った方向での政策展開があるとの指摘もある。ヨーロッパでも中国からのEVの輸入が急増する中で、経済安全保障の観点からの政策転換も見られる。

原子力分野では、アメリカのIT大手が革新的な原子力技術に強くコミットし、ベンチャー企業とアライアンスを組む動きを見せている。また、スリーマイル島原発では廃炉になった1号機について、マイクロソフトが20年間の長期契約を結んで再稼働させるといった動きもある。それほどまで脱炭素電源が求められている。

仮にアメリカがパリ協定から脱退したとしても、(脱炭素化や安定供給、経済性などを訴求する)S+3Eという政策の軸自体は、各国ともそう大きく変わらないのではないか。

再エネか原子力かといった議論はもはや終わっている。再エネも原子力も最大限取り組んでいく必要がある。わが国でも、エネルギー政策の軸がS+3Eであることに変更はない。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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