株大暴落は「植田ショック」と歴史に刻まれるのか 窮地救った内田副総裁の講演に「市場隷属」の危険

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この時点では、大規模介入で円高に揺れ戻したが、日米金利差の拡大観測で円安が再燃し、7月上旬に162円近くまで円が売られたのは前述した通り。政府が円安阻止を強めた中で7月末の金融政策決定会合を迎えた。

円安を加速させた4月末の総裁会見を「大失敗だった」(幹部)と深刻に受け止めた日銀は、追加利上げでタカ派姿勢を打ち出す必要があった。そして、植田総裁は正しくタカ派を演じ、円安修正に成功した。

計算外だったのは、この姿勢転換が金融市場にサプライズとなり、金利差狙いのドル買い・円売りのポジション解消が加速。大幅に円高に揺れ戻し、米雇用統計の悪化という不運も重なり、日経平均の暴落につながったことだ。

決定会合翌日の株価急落は覚悟しただろうが、8月5日の暴落には政府も動揺。日銀は内田真一副総裁が8月7日の講演で、市場動揺に配慮し、ハト派のメッセージを発信せざるを得ない事態となった。

あえて市場に優しいメッセージを送った内田副総裁

「金融資本市場が不安定な状況で、利上げをすることはない」「当面、現在の水準で金融緩和をしっかりと続ける」

植田総裁のタカ派姿勢を打ち消すかのような内田副総裁の一連のハト派フレーズは、政策運営の一貫性を損なう恐れがあるほか、金融政策が市場に隷属する危険性をはらむ。

それでも、あえて市場に優しいメッセージを送ったのは、想定外の株暴落に動揺したからだろう。

幸いなことに内田副総裁の講演を受けて、日経平均は急反発に転じた。円高への流れも一服し、「目先の金融市場は安定を取り戻す」(大手邦銀アナリスト)とみられる。

ただ、このまま日銀が窮地を脱するかどうかは予断を許さない。株価は景気の先行指標として知られ、今回の日経平均暴落や、米雇用統計悪化を受けた米ダウ平均の急落などは、将来の景気悪化の予兆である可能性も否定できないからだ。

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