起こるべくして起きた「円高」はどこまで進むか 米利下げ・日利上げで「円売り投機」が巻き戻し
とはいえ、足元における投機的な持ち高調整の動きはかなり急激であり、今後何度も起きるほどの震度とは言えない。
7月23日時点のIMM通貨先物取引における円のショートポジションは86億ドルであった。これは前週(119.3億ドル)比で33.2億ドルの円買い戻しであり、過去2年間における1週間での円買い戻し規模として最大だ。
ちなみに円のショートポジションが今次局面で最大となったのが7月2日時点(142.6億ドル)で、ここから比べると3週間で6割程度までポジションが圧縮されたことになる。
裏を返せば、投機的な持ち高調整の余地という意味ではあと6割残っているという考え方も可能である。過去1カ月で直面したような円高・ドル安方向への大幅調整は今後何度もあるわけではないが、そうなるだけの「燃料」はまだ一応残されていることも留意したい。
半値戻しで1ドル135円付近
目先における最大の関心事は、そうした投機的な持ち高調整を経てどこまで円高が進むのかという点だろう。
正答を与えるのは難しいが、過去2年間において、最も小さかった円ショートポジションは2023年1月31日時点の19.3億ドルで、この時は130円付近だった。この時よりも需給環境は改善していることも踏まえれば、調整がここまで深くなっても不思議ではない。
ただ、事態はそれほど単純でもない。
現状を客観的に評価すれば、2023年1月時点よりもFRB(アメリカ連邦準備制度理事会)の利下げが確実に織り込まれ、日銀の利上げも相応に織り込まれている。それでもドル/円相場は150円台で定着してしまっているという見方もできる。
もちろん、実際に日銀の利上げとFRBの利下げが着手されれば一気に円高・ドル安方向へ走り出す可能性がある。
結局、「IMMのショートポジションが〇〇億ドルだから△△円」という状況把握はわかりやすいものの、残念ながらかなりラフであり、見通し作成上は使いづらいと言わざるをえない。
約2年3カ月間で110円付近から162円付近まで駆け上がったことを思えば135円付近までは半値戻しであり、さほどおかしな話とも言い切れない。
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