松本市立明善小PTAが「解散を決断」した訳、道のりは決して簡単なものではない 保護者ボランティア組織のあり方と運営のコツ
その後、本部役員会で改めて今後のあり方を検討する話し合いの中で、「PTAを解散するということは、市P連からも退会するということである」と確認。後日、市P連に退会届を提出した。
小学校の場合、児童の登下校を見守る「旗振り当番」の割り振りをPTAが担っていることが多い。仮にPTA解散の声が上がっても、児童の安全確保のための見守り活動をどうするかで意見が分かれ、解散まで踏み切れないというケースも聞く。
「当校は、校長先生が『子どもたちの安全は子どもたちで守る』という考えで、児童会主体で地区別に高学年の児童が低学年の児童をサポートする活動を行っており、PTAは関わっていませんでした。この点も、解散への後押しの要因の1つだったように思います」
【2025年1月20日15時00分追記】明善小PTAと松本市PTA連合とのやりとりについて、内容に誤りがあったため、見出しを含めてその部分を訂正しました。
PTAを解散し、保護者ボランティア組織へ
2024年4月。新年度を迎え、石曾根氏は「明善小PTA会長」から「明善小学校保護者ボランティア代表」と肩書きが変わった。新学期に下記の通知を全保護者に配布し、PTA解散を周知した。

(写真:石曾根氏提供)
「保護者ボランティア組織として、何か新しい名称を考えようという意見も出ました。しかし、名前を付けることで、PTAのように組織的な意味合いを持ち、揺り戻しのリスクもあると考え、あえて名前は付けないことにしました。今後『名前を付けたほうがいい』という意見が再度出始めたら、その時に検討しようと思います」
現在、保護者ボランティア組織の中心メンバーは、代表の石曾根氏以下、副代表は校長を含む4名の保護者。
当然のことながら、会費もないし規約も総会もない。2024年度は、都度参加者を募って
・ ベルマーク集計
・ 体操着リサイクル
・ 運動会前の校庭整備や地下道清掃
を行うのに加え、通年を通して草刈り、草むしり、落ち葉拾いなどを行う予定だという。
ボランティア運営の原資は、これまでPTAで行ってきたアルミ缶回収による売上金を当てる。
解散を決めた時点で、余っていたPTA会費は約120万円。保護者に同意をとったうえで学校と話し合い、体育館の緞帳、ジェットヒーター、移動式スポットクーラーを購入する予定だという。
「PTA解散までの道のりは、決して簡単なものではありませんでした。しかし、時代の変化に対応した組織づくりを実現するためには、必要不可欠な決断だったと考えています。現に、教員不足という課題を抱え、働き方改革を進める学校も、PTAの解散により教職員の負担が減る面もあり、この決断を快く受け入れてくれました」
PTA解散の「メリット」と「デメリット」
石曾根氏に、現時点で感じるPTA解散のメリットとデメリットについて聞いた。
「保護者から『家計が苦しく、PTA会費を支払わずにすむようになってありがたい』『PTA活動のために仕事を休まなければならなかったけれど、自分の都合で参加不参加が決められるため負担感がかなり減った』などの声が聞こえてきます。PTA解散によって、保護者の経済的、精神的負担が軽くなったのはメリットといえると思います。
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