「親ロ国」に懸念、スペイン鉄道メーカー買収騒動 ハンガリー企業の提案に「技術流出」危機感
タルゴ社は、軌間可変車両(日本でいうフリーゲージトレイン)のパイオニアとして知られるスペイン企業で、車軸のない連接構造など、独自の技術が特徴のメーカーだ。
近年は高速列車市場にも参入を試み、2021年にはスペイン鉄道(Renfe)へ106型高速列車「アヴリル」(Avril)を納入する予定となっていたが、開発の遅れによって2024年現在も引き渡しは行われておらず、スペイン鉄道はタルゴ社に対して1億6600万ユーロ(約281億8300万円)の違約金を科している。
こうした問題が明るみに出たことで、タルゴ社の株価は4%下落し、1株当たりでは4.20ユーロ(約713円)となった。前述の通り、ガンツ・マヴァグ・ヨーロッパは1株5ユーロでの買収を提案しており、これはかなり魅力的な提示と言える。
現在、タルゴ社の株式は投資ファンド、トリランティックが40%を保有しており、残りは小規模の投資家が保有している。トリランティックの保有株売却はすでに数年前から噂となっており、2021年にはタルゴ社のライバルであるスペイン企業のCAF社がタルゴ社の買収を検討していた。
ハンガリーからの思わぬ買収提案に、同国企業であるCAF社による買収の再検討を期待する声も上がっている。ただ、CAF社が買収を検討していた当時のタルゴ社の市場価値は4億ユーロ(約680億円)を下回っており、6億ユーロ以上を提示するハンガリーに対抗するためには、倍額に近い提示をしなければならないという問題がある。
スペイン政府が後押し?チェコ企業が名乗り
そんな中、6月に入って新たな話が浮上してきた。チェコのメーカー、シュコダ・トランスポーテーション・グループが、スペイン系の投資持株会社クリテリア・カイシャ(Criteria Caixa)社からの要請に応じて、タルゴ社のパートナーになることを申し出たのだ。
4月末には、シュコダ・トランスポーテーション・グループの幹部がマドリードでスペイン運輸省の高官と会合を開き、そこでスペイン政府は同社による参入の可能性を承認している。オルバン政権が後ろ盾のガンツ・マヴァグ・ヨーロッパによるタルゴ社買収を阻止し、ハンガリーへ自国の技術が流出することを防ぐため、スペイン政府が自国の投資会社を使ってEUのパートナー国であるチェコ企業へ接近を試みたことは明らかだ。
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