戸田市「AIで不登校予測」、9割の学校が「信頼性高い」と評価するも残る課題 「ダッシュボード」連携で教育データ活用を推進

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また、予測モデルの精度を高めていくためには、日々の出欠状況のような、更新頻度の高いデータを多く集めていく必要もあるという。同市では2022年度末から、小学校の校内サポートルーム「ぱれっとルーム」のモデル校に指定された3校において、「シャボテン(心の天気)」というアプリを使い、児童に1人1台端末から心や体の調子を4段階で毎日入力してもらっている。このほか、中学校1校でも、「きもちメーター」という健康観察アプリを活用している。

「心身の調子が悪くなるときが支援のタイミングだと言われていますので、このような毎日の心身に関するデータ収集を拡大して精度を高めていくことは重要になります。また現場から、『リスク判定の根拠がわかりにくい』といったご指摘もあり、例えば『欠席が何日続いたら危険』といったようなシンプルなロジックによるアラートも必要かもしれません。実証事業は、今年3月までで終了しましたが、引き続き市の事業として取り組み、精度を上げたいと考えています」(秋葉氏)

ハードルが高い「いじめや貧困・虐待のSOS検知」

今後は不登校だけではなく、いじめなどのSOS検知にも取り組む方針だが、現時点ではまだ本格的に着手するには至ってない。

「いじめ予測についてはデータのサンプル数も少なく、不登校予測よりもハードルが高く慎重な対応が必要になります。貧困や虐待のSOS検知も同様ですが、そもそもいじめられた子や貧困家庭の子のデータを教師データとしてよいのかというと、難しいと感じています。児童生徒のテキストデータなどから異常を検知するなど別の方法もあり、まだまだ検討が必要な段階にあります」(秋葉氏)

今回の実証事業では、ダッシュボードは「バラバラだったデータをワンストップで確認できるのはありがたい」といった声が多く寄せられた。学力やアンケートの結果も経年比較でき、小中連携の観点からも状況を把握しやすいということで、現場からの評価が高かったという。「実際にデータを活用いただくことで、学校現場のデータリテラシーが向上し、データ取得の重要性も実感いただけたと感じています」と、秋葉氏は話す。

今後の教育総合データの利活用はどう進んでいくのか。教育政策室長の片境俊貴氏は、次のように説明する。

「トライアンドエラーを繰り返しながら、挑戦しつつ改善していく形でやってきましたが、その目的はデータベースを使うことではなく、子どもたちの支援を手厚くすることにあります。また、学校現場が使えるものにしていくことも大切です。当面の目標としては、やはりデータの自動連携などタイムリーにデータを更新できる体制を整えていきたい。SOSの早期把握ができるよう、AIなどの最新技術も活用しながらさらに精度を高めていきたいと考えています」

(文:國貞文隆、写真:埼玉県戸田市教育委員会提供)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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