板橋第十小、総合的な学習の時間「子どもが1000人の大人と会う」授業の効用 若手起業家教員で注目の小泉志信先生の挑戦

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さらに、「1000人の大人と会う」という、これまで公立小学校にはなかった革新的な取り組みに挑戦することで、教育界に何らかのメッセージを届けることができるのではないかと考えました。この事例を参考に、あとから続いて実践する学校が出てくることも想定しながら、プロジェクトを進めました。

——総合的な学習の時間を中心にプロジェクトを進めたそうですが、4年生の1年間の学びはどのように進めたのでしょうか。

正式名称は、meet/make/mix(大人と出会う/大人と共に形にする/大人と子どもが混ざり合う)の頭文字を取り、「3Mプロジェクト」としました。1学期は「大人と出会う」をコンセプトに、大学生や起業家・アーティストなど多様な大人に人生設計をインタビューしたり、アーティストと作品を作ったりしながらその人の生き方にふれました。

1学期は「大人と出会う」、2学期は「大人と共に形にする」をコンセプトに学びを深めた

2学期は、「食」「ゲーム」「林業」など10のグループに分かれ、教員の伴走のもと、企業や専門家の大人と協働しながらゲームのグループではゲームを開発したりなど、それぞれのプロジェクトを形にしていきました。

その後は、これまでの活動をふまえ、子どもたち一人ひとりが自分の人生設計図を作成。その過程においても、100人の大人を学校に集め、100組のペアを作って子どもと大人が混ざり合って人生について対話しながら思考を深めたり、100人のアーティストを呼んで子どもとペアをつくり、自分で作った人生設計を基に「未来の自分に向けて」というテーマでアーティストの力を借りながら絵で表現したりなどの授業を行いました。

——2024年3月には、プロジェクトのしめくくりとして、渋谷にある創業支援施設「SHIBUYA QWS」で「1年間で大人1000人と出会った小学校4年生が語る人生設計発表会」を行いました。1年を振り返り、子どもたちの成長について感じた点を教えてください。

発表会の会場は学校の体育館でもよかったのですが、子どもたちにとって、非日常の空間に足を運んで発表を行うことも、大きな学びになりますよね。このプロジェクトは、「SHIBUYA QWS」が公募している未知の価値に挑戦する「QWSチャレンジ」にも採択されていたため、このような形で開催することができました。

プロジェクトのしめくくりは「SHIBUYA QWS」で発表を行った。この日も各テーブルに子どもと大人がまざり合い、対話した
(撮影:長島氏、撮影協力: SHIBUYA QWS)

1年間を振り返って、子どもたちの社会性は間違いなく伸びたことを実感しています。新しく出会う大人に対しても物怖じせず、自分の考えを伝えられるようになったことは、大きな成長だと思います。

加えて、このプロジェクトを通して、子どもたちが自分の未来について「○○になりたい」など職業をあげるだけでなく、「まず自分が幸せになって、周りの人も幸せにしていきたい」「挑戦することを大切にしたい」「自由に楽しく生きたい」など“自分はどう生きていきたいか”についてしっかり言語化している姿をみて、やってよかったと感じました。

さまざまな大人と関わる中で、家族や友達の大切さを再認識できた子も多かったですね。10歳の子どもたちが自らの手で作り上げた人生設計図が、今後の人生を歩んでいく中で何らかの財産になることができたら嬉しく思います。

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