劉暁波と中国民主化のゆくえ 矢吹晋・加藤哲郎・及川淳子著
ノーベル平和賞を受賞した劉暁波は、国家政権転覆煽動罪によって長い獄中生活を余儀なくされている。その劉の、天安門の虐殺を未然に防いだリーダーシップ、非暴力ながら国家権力を徹底糾弾する剛直さ、妥協に走る知識人への容赦ない批判など、卓越した思想と行動がまず描出される。中国専門家と政治学者の対談本だが、劉の評価から始まり、経済改革・政治改革・民主改革の虚実と腐敗、巨額の外貨準備から米中関係展望へと進む現代中国論は鋭く明快である。
08憲章、裁判での陳述書、有罪の根拠とされた劉の六つの文書(中でもヤミ煉瓦工場の児童奴隷事件告発は圧巻だ)などの資料と合わせ、言論はじめ基本的人権がないがしろにされる一党独裁国家の矛盾と宿命を明らかにしようという試みはほぼ成功している。最終陳述で検事も裁判官もさらには政府まで「私には敵はいない」と言い切る劉のしなやかさと強さ。敗者はおのずから明らかである。(純)
花伝社 2310円
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