沖縄で自衛隊の新訓練所計画が失敗した理由 軍事的合理性と地元感情が対立する構造続く

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新たな訓練場では、新設された陸自地対艦ミサイル部隊の発射機展開の動作訓練や、空包射撃、公道も使っての夜間行進などが想定されている。3月21日に、地対空ミサイル部隊と同じく陸自勝連分屯地に配属された地対艦ミサイル連隊は、新訓練場ができれば沖縄本島内で訓練を行えるようになるという。

勝連分屯地は、米海軍の軍港ホワイト・ビーチに隣接している。米海兵隊は、ホワイト・ビーチに寄港した強襲揚陸艦に乗って、日本内外での訓練で移動しており、今後は陸自ミサイル部隊との共同訓練も予定される。新訓練場が日米共同訓練で利用されることもあるだろう。

目の前に住宅、裏側にリゾートホテル街

ただし、防衛省が2月に行った住民説明会では、住民の反発を和らげるため、ミサイルの動作訓練や射撃は訓練内容から削除されていた。夕方から翌早朝まで40キロ近く行進する夜間訓練も、戦車の走行は住宅密集地を避けると説明された。

実際には、ゴルフ場跡地の入り口目の前は一般住宅。入り口に面した道沿いに約500m行くと、地域住民の交流の中心となっている公民館と公園がある。その先はショッピング街だ。住宅地を避けての部隊移動は不可能だろう。

何よりも、石川インターチェンジを降りてゴルフ場跡地の方角とは反対に進むと、恩納村のリゾートホテル街に出る。ちょうどゴルフ場跡地の裏側に位置するのは、かねひで恩納マリンビューパレスやザ・ムーンビーチミュージアムリゾートなど、地元資本の老舗ホテルだ。もし新訓練場で射撃訓練が行われるようになれば、恩納村の高級リゾート地まで音が響き、宿泊客が激減する恐れがある。

これが、保守のうるま市政や自民党沖縄県連が反対する最大の要因だろう。沖縄ホテル業界は自民党の主たる支持基盤の一つなのである。

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